1 / 2
前編
しおりを挟む「実はさ、俺、他に好きな人できてしまったんだよね」
婚約者リリウはさらりとそんなことを言い出した。
私たちはずっと昔から婚約者同士になる予定の関係だった。幼馴染みのような関係だった私と彼が婚約したのは、生まれて間もない頃に決まったことで。でもそれを嫌だとは思っていなかったし、お互い、相手のことを気に入っているくらいだった。
だからこんな日なんて来ないと思っていた。
友人が婚約破棄された時も、そんなこともあるんだなぁ、と思った程度でしかなかった。
それほどに、私はリリウを信じていたのだ。
「だからさ――婚約、破棄するね」
でもその日は来てしまった。
彼は私との終わりを望んだのだ。
「婚約破棄……そんな軽い感じで言うの?」
「うん、だって、そうしたいんだもの」
「婚約は一種の契約よ。貴方がしようとしていることは契約違反だわ」
「本当の愛に目覚めたら仕方ないことだよ」
リリウは笑顔で続ける。
「それとも、愛されない妻になる方がいい?」
――どうしてそんな顔をするの。
今の彼は私なんて完全にどうでもいいみたい。
過去に贈ってくれた優しい言葉なんて別人が発したもののように思える。
それほどに彼は変わってしまった。
「嫌だよな? じゃ、そういうことだからね。俺は愛する人と生きる。……あんたも精々幸せになれよな」
こうして終わった二人の関係。
とても悲しい。
彼と共にありたかった。
過去に戻ってやり直してみたい。
でもできない――人間は過去へ戻るなんてことはできないから。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる