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前編
しおりを挟む優しい婚約者と結婚し、幸せになる。
そんなおとぎ話を聞いて育った。
だから婚約者という存在は己の支えになってくれるものなのだと思っていた。
その人となら幸せになれると思っていた――。
「あんたとの婚約、破棄するわ」
でもその日は来てしまった。
終わりを告げられる日。
幸せになれると思っていた――でもその考えは正しいものではなかったのだと、今になって気づいた。
とても良い気候の日だった。
花は咲き乱れ、甘い香りが漂って、心地よい気温で、包み込む女神の笑みのような風が吹き抜ける。
幸福を絵に描いたような。
そんな日だった。
「婚約破棄……なぜ?」
「レベルが違う女とは無理だからだ」
思えば、婚約者ツリシーは時折私を悪く言っていた。あんたはくそだな、とか、あんたはもうちょっとどうにかならないのかね、とか。そういうことをたびたび言っていた。けれども、この道の先に幸福があると信じていた私は、何か言ってるなくらいにしか思っていなかった。ツリシーも、優しい時もあったので、ああいう時は機嫌が悪いんだな、としか思わなかった。
でも違った……。
「低レベルな女を相手していたらこっちまで低レベル化してしまう。だから婚約は破棄だ。じゃあな、ばいばい」
私の信じてきたものはすべて壊れてしまった。
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