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1話
しおりを挟む先日、婚約者アドベレームの浮気が発覚した。
浮気という表現が正しいのかどうかは定かでないが。
ただ彼は私という婚約者を持っていながら他の女性にも腕を伸ばしていたのだ。
ちなみに、そのような行いがなぜ発覚したのかというと、相手女性が私のところへ急にやって来たのである。
「貴女、アドベレーム様の婚約者よね? いいこと? 彼に愛されているのはあたしよ。だから貴女は早く消えてちょうだい!」
見るからに高飛車そうな彼女――フレリアは、私のところへ突撃してきて、いきなりそんなことを言ってきた。
「貴女は婚約者だからあたしに勝っていると思っているのでしょう。でもそれは間違いよ! 彼が本当に愛しているのはあたしなのよ!」
あの時は大層驚いた。
しかしフレリアから話を聞いているとなるほど確かにアドベレームは彼女を大事にしているようで。
そうして私はアドベレームの裏切りを知ったのである。
だから私は婚約を破棄することを決めた――彼にそう告げた時には「嫌だ! 絶対に!」と言われたけれど、それでも私の心は変わらなかった。
彼とはもう一緒には歩めない。
人間、一度そう思ってしまったら、心というのはそう簡単には変わらないものなのだ。
彼はしまいに怒り出して「ちょっと遊んだだけで婚約破棄なんて心の狭い最低女だ!」とか「お前がこんなくずだとは思わなかった!」とか言い出して。それからも暴言をたくさん並べて、私の心を傷つけ続けて。
――でも、その方が良かったのかもしれない。
彼の黒い部分を見てしまったのは残念だった。
でもだからこそ関係をおしまいにすることができた。
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