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前編
しおりを挟む花咲く都、そこはいろんな姿を持つ魔族たちが共に生きている穏やかな場所――そして、私と私の夫である魔王エブレイが暮らす地でもある。
中央公園には毎年無数の花が咲く。
昔から自然と毎年生えてくる不思議な花もあるが、魔族の人々が花壇を作りそこに植えた花もある。
けれども、生まれ方は異なっていても、それらが対立することはなく。
花たちはそれぞれの生まれ育ちを当たり前のものと受け入れながらも懸命にその美しい姿を輝かせる。
そこには不毛な争いなんてない。
そして私の人生もまた――かつては色々あったけれど、今は、中央公園の花のように彩られている。
それもこれも、すべて、人の国で理不尽な目に遭わされた私をエブレイが拾い救ってくれたおかげだ。
◆
当時、私は、人の国の王子と婚約していた。
そこそこ良いとされる家柄に生まれた私は親の意向もあって気づいた時には王子との結婚を受け入れなくてはならないことになっていたのだ。
けれどもそれでも良いと思っていた。
幸せになれるなら。
相手は誰でも。
そんな風に思い、王子と共に歩もうと考えていた。
が、ある時、王子の幼馴染みの女性に目をつけられてしまって。それからというもの、定期的に虐められるようになった。いじめに困った私は婚約者である王子に相談してみるが無視されて、周囲にもまともに相手してもらえなかった。疲れているのだろう、とか言われたこともあったくらいだ。
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