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「分かった、もういいわ」
「はい……」
改めてカイルに視線を向ける。
「じゃあ宣言すればいいわ」
彼は一瞬怯んだような顔をした。
が、数秒後、口を開く。
「アルメニアさん、婚約破棄させていただきます」
もはや彼に迷いはなかったようだ。
「分かったわ、手続きをしましょう。ただ、そちらの都合ということだから。代償として何らかの支払いを行ってもらうことになる可能性が高いわよ」
「……仕方がないから受け入れるよ」
仕方がないから、じゃないでしょ!? と言いたくなるのを堪えつつ。
私は二人に別れを告げた。
帰り道、少しばかり切なさを感じもした。手の内にあると思っていたものがすべて消え去った。それが悲しいというか切ないというか何というか。言葉で上手く表現することはできないけれど、何とも言えぬ複雑な気持ちが胸を満たすのだ。
それでも元には戻れない。
もう変わってしまったから。
振り返るのはやめよう。なかった今に想いを馳せるのはやめよう。もう過去には戻れないのだ、いくら考えても無駄というもの。
哀愁を漂わせるような風が吹いていた。
◆
婚約破棄の手続きを進めることとなった。
これは私たち二人だけの問題でもない。家と家にも関係している。そのため、互いの両親も出てきて、今後に関する話をすることとなった。
「はい……」
改めてカイルに視線を向ける。
「じゃあ宣言すればいいわ」
彼は一瞬怯んだような顔をした。
が、数秒後、口を開く。
「アルメニアさん、婚約破棄させていただきます」
もはや彼に迷いはなかったようだ。
「分かったわ、手続きをしましょう。ただ、そちらの都合ということだから。代償として何らかの支払いを行ってもらうことになる可能性が高いわよ」
「……仕方がないから受け入れるよ」
仕方がないから、じゃないでしょ!? と言いたくなるのを堪えつつ。
私は二人に別れを告げた。
帰り道、少しばかり切なさを感じもした。手の内にあると思っていたものがすべて消え去った。それが悲しいというか切ないというか何というか。言葉で上手く表現することはできないけれど、何とも言えぬ複雑な気持ちが胸を満たすのだ。
それでも元には戻れない。
もう変わってしまったから。
振り返るのはやめよう。なかった今に想いを馳せるのはやめよう。もう過去には戻れないのだ、いくら考えても無駄というもの。
哀愁を漂わせるような風が吹いていた。
◆
婚約破棄の手続きを進めることとなった。
これは私たち二人だけの問題でもない。家と家にも関係している。そのため、互いの両親も出てきて、今後に関する話をすることとなった。
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