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「察してくれていたのかい? ありがとう。ありがたい、助かるよ」
彼は妙に嬉しそうにそんなことを言い出す。
大好きな料理が出てきたかのような顔つきである。
「はぁ……。それで? 婚約破棄でもするというの?」
「あ、あぁ! そうなんだよ! そうさせてもらいたいんだ!」
カイルはおもちゃを貰った子どもであるかのように嬉しそうな声を発する。普通に喋っているだけのはずなのに、言葉一つ一つが弾んでいる。歌っているか踊っているかのような声を発し方だ。
「その娘のことを愛している、本気なのね?」
「あぁ! もちろん!」
数秒の沈黙の後、私は少女の方へと視線を向ける。
「貴女もカイルを愛しているの?」
尋ねるが、彼女はすぐには答えない。ただ、ほんの少し俯いて、恥ずかしそうに頬を赤らめるだけ。両手の手のひらを軽く合わせ、膝の辺りにそっとおいている。
暫し沈黙が訪れる。
カイルは心配しているような視線を彼女へ向けていた。
「……愛して、います」
長い沈黙の後、少女は答えた。
「愛しているのね」
「はい。愛しています……その、心から。この想いに嘘偽りはありません……!」
少女には迷いはないようだった。
「他人の婚約者を奪うだなんて凄い女ね」
「すみません。……でも、愛してしまったら、もうとまれません」
愛してしまった? もうとまれない? 知ったことか。何を言おうが、どんな風に脚色しようが、彼女の行いに問題があったという事実に変わりはない。カイルに婚約者がいることくらい知っていたのではないのか? なぜ、婚約者がいる男性に近づくべきではないと、きちんと判断できなかったのか?
彼は妙に嬉しそうにそんなことを言い出す。
大好きな料理が出てきたかのような顔つきである。
「はぁ……。それで? 婚約破棄でもするというの?」
「あ、あぁ! そうなんだよ! そうさせてもらいたいんだ!」
カイルはおもちゃを貰った子どもであるかのように嬉しそうな声を発する。普通に喋っているだけのはずなのに、言葉一つ一つが弾んでいる。歌っているか踊っているかのような声を発し方だ。
「その娘のことを愛している、本気なのね?」
「あぁ! もちろん!」
数秒の沈黙の後、私は少女の方へと視線を向ける。
「貴女もカイルを愛しているの?」
尋ねるが、彼女はすぐには答えない。ただ、ほんの少し俯いて、恥ずかしそうに頬を赤らめるだけ。両手の手のひらを軽く合わせ、膝の辺りにそっとおいている。
暫し沈黙が訪れる。
カイルは心配しているような視線を彼女へ向けていた。
「……愛して、います」
長い沈黙の後、少女は答えた。
「愛しているのね」
「はい。愛しています……その、心から。この想いに嘘偽りはありません……!」
少女には迷いはないようだった。
「他人の婚約者を奪うだなんて凄い女ね」
「すみません。……でも、愛してしまったら、もうとまれません」
愛してしまった? もうとまれない? 知ったことか。何を言おうが、どんな風に脚色しようが、彼女の行いに問題があったという事実に変わりはない。カイルに婚約者がいることくらい知っていたのではないのか? なぜ、婚約者がいる男性に近づくべきではないと、きちんと判断できなかったのか?
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