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前編
しおりを挟む「おい! さっさと掃除しろ! 婚約者だろう!」
「は、はい……」
私には同居している婚約者がいる。
その名はエーギルフィード。
彼は顔立ち自体は整っているのだが性格はあまりよろしくない、非常に高圧的で女性というものそのものを見下している。
「掃除、終わりました」
「遅い」
「次は……」
「話を変えてごまかすな! まずは遅かったことへの謝罪をしろ!」
「ですが先日謝罪した際には『謝罪はいいからさっさと次の用事へ移れ』と仰っていましたよね……?」
ここでは私は奴隷である。
それゆえ言われるままに働き続ける外ない。
もっとも、懸命に働き続けてもそれでも批判しかされないのだが……。
「すみません」
「土下座しろ!」
「はい……申し訳ありませんでした」
「馬鹿! こういう時は『私が間違っていました、価値の低い人間なのに口ごたえをして申し訳ありませんでした。二度としません。どんな罰でも受けます、ですからどうかお許しください』と言うのが常識だろうが!」
呆れるほど理不尽である。
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