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前編
しおりを挟む口だけは上手くて人気者な第三王子リットルと婚約していた私はこれまでずっと浮気を繰り返されてきた。
でもこちらにあれこれ言う権利はなくて。
相手が王子であるということもあって、私は、ただぐっとこらえていることしか選択できなかった。
それ以外の選択肢はあってないようなものだったのだ。
だがある時ついに。
「君との婚約、破棄するよ」
関係が終わる時が来た。
それは思わぬ形で私に迫った。
――そう、リットルが自ら関係の解消を宣言してきたのである。
「君にはもう飽きたよ」
「それが理由ですか?」
「ああそうさ。だってこの世界にはもっと素晴らしい女性がたくさんいるからね、君に縛られて生きていくのは嫌だし、もう君との関係はすべて無に返すこととしたんだ」
こうして私は彼から解放されることとなる。
「じゃあね、永遠にさようなら。――あ、そうだ、ストーカー化しないでよ? 好きだからって。オーケー? 分かったかな? じゃ、ばいばい」
想定外の展開。
でも悪いことばかりでもない流れである。
ようやくこの厄介な人から解放されたことだし、しばらくは実家へ戻ってのんびりと――そう考えていたのだが。
「実はずっと、貴女に憧れていました」
婚約破棄されたその日、リットルの兄でもある第一王子フィーガフより秘めていた想いを明かされて。
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