1 / 2
前編
私は魔法が使える。
一方、妹レリスはというと、魔法は使えない。
けれども、親や周囲から愛されているのは、どちらかというとレリスの方だった――恐らく、大人は魔法を使える私の存在が少し怖かったのだろう。子どもが見ても分かるくらい、大人たちは皆私よりレリスを可愛がっていた。
そんな状態だったのだが、年頃になると、レリスは私の魔法の才能を利用し始めた。
彼女は私の魔法を己のものとして扱うようになったのだ。
私は親から殴られ蹴られで従うよう命令されていた。
だから逆らえず。
レリスが魔法を使えるという話を嘘とばらさないために協力せよ、という命令に、ただ従うしかなかった。
「レリスさん、初めまして。とてもお美しい方ですね」
「うふふ、よく言われます!」
今日はレリスが婚約者オッフル王子と初めて対面する日だ。
私は従者として彼女についていなくてはならない。
そして必要な時があれば魔法を使ってレリスが使っているように見せなくてはならない。
上手くいくだろうか。
正直自信はあまりない。
それに、王子を騙すというのも、少々申し訳ない気がする。
彼が純粋に信じているならなおさら。
「あ、ああ……個性的ですね」
「すみません~。ちょっとそんなところもあって」
「それで、魔法を使えるとか。事実ですか?」
「はい!」
レリスは笑顔で迷いなく返事した。
彼女には罪悪感なんてものは存在しないのだろう、恐らく。
「では、できれば、何か見せてくださいませんか?」
「はいっ」
「わぁ! 嬉しいです。実はずっと、魔法というものをこの目で見てみたかったのです!」
「ではやりますねっ」
レリスが片手を動かし構える。彼女は慣れた様子で手のひらを上にしていた。その時に魔法を発動する、私が。彼女の手もとに光を出す、これでレリスが魔法を使っているように見せかけるのだ。
あなたにおすすめの小説
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。
しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。
「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」
身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。
堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。
数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。
妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。