翡翠のような色の瞳が好きだった。~婚約破棄された君は何よりも切なげで~

四季

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後編


 できるなら慰めたい。
 今すぐにでも抱き締めて。

 泣かないで、って、そう言いたい。

 でも、僕みたいな人間には、そんなことをする権利はないし勇気だってない。

「泣かないで」

 だから言葉だけを発してみた。

 すると彼女は苦しそうに笑う。

「うん。……ごめんね、ありがとう」

 その表情はあまりにも切なげで。
 思わず手を握ってしまった。

「え」
「……ごめん、こんなことして」
「え、あの」
「元気出してほしくて、それで……ごめん、でも、どうか泣かないで」

 まともな言葉なんて紡げない。でもだからといって言葉を止めることもできず。口が勝手に動いてしまう。

「……気持ち悪いよね」

 すると彼女は。

「ううん! そんなことない!」

 首を横に振ってくれて。

「ずっと一緒に遊んできたんだもん! 気持ち悪いとか、そんなのないよ! そんなわけない!」

 強く、そう言ってくれた。

 翡翠のような色の瞳がこちらをじっと見つめる。

「……ねえ、あのさ」

 彼女は少し気まずそうに口を開く。

「もしよかったら、付き合わない?」

 ああ、これは――。

「駄目かな」

 これは、始まりの鐘の音か。

「……駄目じゃないよ、ううん、むしろそう言ってもらえて嬉しいよ」
「ほんと?」
「うん、本当だよ」
「そっか……良かった」

 握った手はもう離さない。
 そう誓える。
 少なくとも、僕は。

「ありがとう。じゃあ、これからよろしくね?」
「こちらこそ」

 物語が動き出す。

 二人だけを乗せて。


◆終わり◆
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