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1話「嬉しくないことの多い人生」

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 思えば嬉しくないことの多い人生だった。

 家庭はいつも妹が中心。
 私はすみっこで。
 同じ娘のはずなのに、妹はまるでお姫様、私はほぼ存在のない空気同然の女。

 両親はいつも妹のことばかり贔屓していた。そして、妹がちょっとでも私を悪者であるかのようなことを言ったなら、それを鵜呑みにして私を叱った。両親にとっては妹がすべて。私が本当に悪者かどうかなんてどうでも良かったのかもしれない、と、後から考えると思うほど。妹がやらかしたことを私の罪にされたこともあったくらいだ。

 そして、婚約者オッド、彼も私のことをいつも悪く言った。

 そんなに嫌なら婚約なんてしなければ良かったのでは? と一度だけ言ってみたのだが、そうしたら物凄く怒られた。

 とにかく理不尽な人だった。

 そして、オッドの母親も厄介な人で、息子の妻となる私のことが気に入らないのかことあるごとに小さな指摘をしてきた。いちゃもん同然のことを言われたことも少なくはない。とにかくやたらと絡み、敢えて不快な思いをさせてきたのである。

 だから、彼に婚約破棄を告げられた時は、一瞬嬉しかった。

 彼から、彼の母親から、解放される。

 それが嬉しくて。
 束の間ではあるが光を見られた気がした。

 しかし。

 婚約破棄され実家へ戻った私を待っていたのは、両親からの激怒と妹からの侮辱だった。

 母親は「婚約破棄されたのは貴女が魅力的でなかったからでしょ」とか「貴女がちゃんとしていれば婚約破棄になんてならないわよ」とか言ってきた。

 実の娘に対して平然とそのようなことを言える神経が理解できない。
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