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2話「どうせならやってみよう」

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 父親は私を叱った。
 どうして気に入られるように振る舞えなかったのか、と。

 そして妹は私のことを馬鹿にしてきた。前からそうなるとは思っていたけど、などと前置きしたうえで、すれ違うたびに失礼なことを言ってくる。また、私の部屋へ『捨てられた可哀想なお姉さま、この求人がおすすめよ。身を売ってみてはどう? 仕事でなら愛されるかもしれないわよ? なーんてね。ま、精々我が家のために貢献しなさいよ、お金を稼いでね』などというメモを置いてきたことも複数回あった。

 生まれた家にさえ居場所はない。

 絶望した私は命を終わらせることにした。
 このまま生きていても辛いだけだから。

 酷い人生だった……。

 しかし、その死が、私の運命を変えた。


 ◆


 湖に飛び込んで死を迎える直前、私は一人の半透明な老人を見た。

 その人は「可哀想に」と泣きそうな顔でこぼしてから、手に持っていた杖の先をこちらへかざす。

 そして気づけば湖畔にいた。

(生きて……いる……?)

 ふと地面を見ると『その力を使って復讐せよ』と書かれた紙が落ちていた。

 意味が分からなかった。
 でも生きなくてはならないのだと感じて。

 仕方がないので自宅へ帰ることにした。


 ◆


「ちょっと! どこへ行っていたのよ! いい加減にしなさいよ、周囲に迷惑ばっかりかけて。ホント、役に立たないわね! だから貴女は妹と違ってゴミな……」

 掴みかかろうとしてくる母親の手を払おうとした、瞬間、手のひらから光が放たれて母親が一瞬で消え去った。

「え……」

 手が触れた、それだけなのに、母親が消えた。

 人一人が消滅した。

 骨どころか灰さえ残っていない。

 あの紙に書かれていた『その力』ということはこの力のことだろうか? 確かに強力そうなので復讐には使えそうだが。でも、この力は一体何なのだろう? 私はどうなってしまったのだろうか? それは私が考えることではないのかもしれないけれど。

 だが。
 どうせならやってみよう。
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