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後編

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 人魚のような女性、彼女は、海の女神だった。

 とても美しい。
 そして包容力がある。

 話を聞いてもらっているうちに、次第に彼女に惹かれていった。

 だから。

「ねえ、これから、一緒に海で暮らさない?」

 海の女神にそう言われた時はとても嬉しくて。
 すぐに頷いた。

 そうして僕は彼女と海で暮らすようになった。

 こんな人生を予想してはいなかったけれど、案外悪いものではなかった。


 ◆


 あれからどのくらい時が経っただろう。
 もう数年は経っていると思う。
 僕は今も海の女神と共に海の中で暮らしている。

「貝殻のネックレスを作ってみたんだ。君に贈るよ」
「あら、器用ね」
「貰ってくれないかな?」
「もちろん。嬉しいわ。貰うわね」

 彼女と生きる毎日は幸福に満ちている。

 ちなみに元婚約者のリリアはというと、海の女神と暮らしだして少し経った頃に亡くなった。

 その日、彼女は新しい婚約者と思われる男性と一緒にこの海に来た。その顔はとても楽しそうで。それを見ていたら自然と泣いてしまった。そんな僕を見た海の女神は怒り、ご機嫌なリリアを海中に引きずり込んでしまう。そうしてリリアは溺れた。彼女は婚約者の目の前で落命した。

 他の男と楽しそうにしている彼女をもう見なくて済むという安堵感はあったけれど、少し寂しさも感じた。


◆終わり◆
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