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前編

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「君のような品のない女、ここには必要ない! よって、婚約は破棄とする!」

 婚約者マーブルは突然そう告げた。
 それも公の場で。

「いきなりですね……」
「さっさと去ってくれ!」

 なぜ敢えて人がいるところで告げるのか?

 その理由はすぐに分かった。
 彼の周りの女性たちが話を聞きながらくすくす笑っていたから。

 恐らく彼女たちが仕組んだのだろう。

「分かりました。……では」

 私は悲しかったけれど、それ以上言い返すことはできず、マーブルの前から去った。


 ◆


 その時の私は少し感情的になっていて。見慣れた崖に差し掛かった時、私はその先端へと歩みを進めた。そして下を見る。

 ……高い。

 恐ろしいけれど、きっと……ここから飛び降りれば死ねるだろう。

 考えた、刹那。

「そこの君! 何してるの! 危ないよ!」

 声が私を引き留めた。
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