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前編
しおりを挟む「お前のような何の取り柄もない女、俺は愛さないし必要だとも思わない。よって! 婚約は破棄とする!」
婚約者アドレードはあるパーティーの最中そんなことを宣言した。
「え……」
「何を驚いているんだ、当然のことだろう。お前と一緒にいても良いことなんて一個もない。だからすべておしまいにする、ただそれだけのことだ」
アドレードは信じられないくらい冷ややかだった。
でも。
「それにな。俺、好きな女ができたんだ。お前より可愛くてお前より忠実で優秀、そんな女だよ」
その言葉を聞いた時、私はすべてを理解することができた。
「それが理由……なのですか?」
私は選ばれなかった。いや、そうじゃない。乗り換えのために捨てられてしまったのだ。他の女に乗り換えられてしまった、それが現実でそれがすべてなのだろう。
「ま、それもあるな。お前はあくまでキープだったからな」
じゃあな、ばいばい。
彼はそう言って私との関係を強制終了させたのだった。
「何あれ、ひど……」
「あり得ないわね、一方的に婚約破棄なんて。しかも公の場で、なんて……もうちょっと人の気持ちを考えられないものかしらね」
「周囲だって気を遣うし」
「せっかくのパーティーだってのに冷めるわ。あり得ない、意味不明。迷惑過ぎでしょ」
会場内にいた参加者の人たちはひそひそ話をしていた。
けれどもその多くがアドレードの身勝手な行動を批判するといった方向であった。
「あの娘可哀想ねぇ……」
「ほんと」
「迷惑よねああいう男」
「しかも乗り換えとかないわー。ほんと、サイテー過ぎだわー」
私を責める声はあまりなかったのは救いだった。
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