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後編

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 ◆


 アドレードとの婚約が破棄となった日から一週間ほどが経ったある日、私に聖女の力が舞い降りて宿った。

「貴女こそは! 真の聖女! 間違いありません!」

 信じられないことだけれど、それは現実だった。

「奇跡だ! 奇跡が起きたぞ!」
「キタアアアァァァァ!!」
「ついにか!」
「これは来たんじゃねぇかぁ~!?」
「これで国は救われるうううぅぅぅ!!」

 こうして一躍時の人となった私は聖女として祭り上げられ、国を護ってゆくために王子と結婚することになった。

 その王子はとても善良な人。これまであまり女性との関わりはなくきていた人だと聞いているけれど、大人しくも包み込むような優しさのある素敵な人だった。
 神に近い、そんな風に皆から扱われていてもなお誠実で。
 勘違いして威張り散らすといったようなことは絶対にしない、謙虚だし温厚という素晴らしい人物であった。

「これから、どうぞよろしくお願いしますね」
「こっ……こちらこそっ。よろしくお願いします! どうか! お願いしますっ」
「落ち着いてくださいね」
「あ……す、すみません」
「緊張なさる必要はありませんよ。僕とてただの一人の人間ですから。それ以上でもそれ以下でもありませんから」

 私はこうして王子と結ばれ幸せになれたのだが、それとは対照的にアドレードは残念な最期を迎えることとなった。

 というのも、彼は、親しくなっていた女性にプロポーズした途端逃げられそれでも追い掛け回していたところ女性の父親が出てきて雷魔法を心臓に命中させられたそうで、それによって即死したのだそうだ。

 どこまでも愚かな人。
 そして呆れるほど残念な人。


◆終わり◆
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