婚約破棄されても幸せに。 ~異世界恋愛作品集・短期連載まとめ~

四季

文字の大きさ
5 / 19
ある日突然見知らぬ女性が訪ねてきました、どうやら婚約者の浮気相手のようなのですが……?

1話「ある日突然」

しおりを挟む
「あんたがアイリーン・ミシェラですわね?」

 ある日突然私の住む家にやって来たのは見知らぬ女性だった。
 可憐な印象を与える目鼻立ちの華やかな人で、一見可愛らしそうなのだが、どこか黒い空気感をまとっているような人物だ。
 悪者のような見た目というわけではない。ただまとっているものに悪者感があるというかなんというか。そういったような印象のある女性である。

「ええと、貴女は……」
「わたくしの名はララン! 代々王都で本屋を営む高貴なる家柄のお嬢さまですわ!」

 自分のことをお嬢さまと言うなんて……ちょっとおかしな感じね。

「今日はあんたに用事があって来ましたの」
「あの……お知り合いではないですよね」
「そういう問題ではありませんわ! そちらが興味がなくてもこちらは興味がありますの! というより、言いたいことがありますのよ!」
「言いたいこと?」
「ええ! ええ! そういうことですの! わたくし、ずっとずっと我慢して差し上げてきましたけれど……でももうこれ以上は我慢できませんわ! ということで、はっきり言うことにしましたの!」

 暫し間があって、ラランは鋭く言い放ってくる。

「あんた! カイールさまから離れなさい!」

 まさかの発言に戸惑う。
 すぐには状況が呑み込めない。

 ただ、カイールという者が誰なのかというのは分からないわけではない。というのも、私の近くにもカイールという人物がいるのだ。あくまで多分、ではあるけれど、彼女が言っているカイールというのは恐らく私が知っている彼のことなのだろう。

 カイール・ディボロス――それは私の婚約者の名だ。

「婚約しているからといっていつまでも縋りついてんじゃないわよ!」
「……何を仰っているのですか?」
「カイールさまが愛しているのはわたくしですわ!」
「ええと……すみません、本当に、意味が」
「だ! か! ら! わたくし、カイールさまとそういう仲になっているんですの。あんたはただの婚約者で本命はわたくし、そういうことですわよ! いい加減現実に気づきなさいよ!」

 ラランは好き放題強気なことを言ってくる。
 でもその発言一つ一つが明日の自分の足を引っ張っている。

 婚約者がいる男性に手を出している、そんなことを自ら言ってしまったら後でどうなるか。少し考えれば分かることだろう。ほんの少しでの先のことを考える知能があるなら、普通はそんなことは口から出せないはず。男性との実際の関係がそういうものだとしてもできる限り黙っておくはず。それを敢えて言ってしまうというのは、一体どういう神経をしているのか、と思わずにはいられない。

「ラランさんはカイールと深い仲になっている……というお話ですか」
「そうですわ!」
「……それって、明かして良いことなのですか?」
「もっちろん! 事実ですもの! 本当のことを言って何が悪いの、としか思えませんわね。わたくしは何一つ嘘はついていませんわ!」

 彼女は呆れるほど堂々としていた。

「婚約者がいる男性に手を出すとどうなるかご存知ですか?」
「はぁ?」
「貴女がしていることは問題になることです」
「あららぁくっだらない負け惜しみぃ」
「そういう問題ではありません。私は今、貴女から慰謝料を取れる状態です。もし私がその気になれば、貴女は痛い目に遭うことになりますよ」
「はあ? 何よそれ! うっざい! 痛い目に遭うのはあんたでしょ、これから婚約者に捨てられるんだもの」

 まだ分からないのか?
 どこまで愚かなのか?
 敢えてチャンスをちらつかせてあげているのにそれに気づけないなんて……彼女はなぜそんなにも思考力がないのだろう、謎過ぎる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黒の聖女、白の聖女に復讐したい

夜桜
恋愛
婚約破棄だ。 その言葉を口にした瞬間、婚約者は死ぬ。 黒の聖女・エイトは伯爵と婚約していた。 だが、伯爵は白の聖女として有名なエイトの妹と関係をもっていた。 だから、言ってはならない“あの言葉”を口にした瞬間、伯爵は罰を受けるのだった。 ※イラストは登場人物の『アインス』です

亡き姉を演じ初恋の人の妻となった私は、その日、“私”を捨てた

榛乃
恋愛
伯爵家の令嬢・リシェルは、侯爵家のアルベルトに密かに想いを寄せていた。 けれど彼が選んだのはリシェルではなく、双子の姉・オリヴィアだった。 二人は夫婦となり、誰もが羨むような幸福な日々を過ごしていたが――それは五年ももたず、儚く終わりを迎えてしまう。 オリヴィアが心臓の病でこの世を去ったのだ。 その日を堺にアルベルトの心は壊れ、最愛の妻の幻を追い続けるようになる。 そんな彼を守るために。 そして侯爵家の未来と、両親の願いのために。 リシェルは自分を捨て、“姉のふり”をして生きる道を選ぶ。 けれど、どれほど傍にいても、どれほど尽くしても、彼の瞳に映るのはいつだって“オリヴィア”だった。 その現実が、彼女の心を静かに蝕んでゆく。 遂に限界を越えたリシェルは、自ら命を絶つことに決める。 短剣を手に、過去を振り返るリシェル。 そしていよいよ切っ先を突き刺そうとした、その瞬間――。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。

ふまさ
恋愛
 伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。 「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」  正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。 「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」 「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」  オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。  けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。  ──そう。  何もわかっていないのは、パットだけだった。

大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです

古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。 皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。 他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。 救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。 セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。 だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。 「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」 今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました

よどら文鳥
恋愛
 ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。  ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。  ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。  更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。  再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。  ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。  後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。  ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

処理中です...