婚約破棄されても幸せに。 ~異世界恋愛作品集・短期連載まとめ~

四季

文字の大きさ
7 / 22
ある日突然見知らぬ女性が訪ねてきました、どうやら婚約者の浮気相手のようなのですが……?

3話「事件の後で」

 信じていたにもかかわらず裏切られたラランの怒りは凄まじいものだった。
 彼女は取り出した刃物でカイールを傷つけた。
 憎しみを露わにするためなら命を奪うことすら厭わない、といったような、見ていて震えるほどの勢いで。

 ……そしてカイールは落命した。

 カイールを仕留めた後、息を荒くしながら一時的に動きを止めていたラランを見て、私はすぐに親を呼び同時に通報した。駆けつけた治安維持組織の人たちはラランを拘束し、両親は私を保護的な意味も兼ねて安全な場所へ連れて行ってくれた。

「あんなことに巻き込まれるだなんて災難だったわね、アイリーン」
「母さん……」
「怖かったでしょう」
「まさかあんな大事になるなんて思わなかった……」
「今は休んで」
「そうする」
「わたしも、お父さんも、一緒にいるから。大丈夫よ。何も恐れないで」
「ありがとう」

 その日の晩は一睡もできなかった。
 目を閉じるとどうしてもあの血に塗れた瞬間が蘇ってきてしまう。

「アイリーン、眠れないのか」
「うん」
「父さんが絵本でも読んでやろうか?」
「いや、それはいいわ」
「ガァーッン!!」
「そのうちに眠くなったら寝ようと思って……」
「ああそれがいいな」
「父さん、心配させてしまってごめんなさい」
「気にするな!」
「……声が大きい!」
「すまん」
「でも、寄り添ってくれてありがとう。感謝しているわ。あんなことがあった後で一人でいたら怖くてひたすら震えそうだもの」

 父も母も優しかった。それは日頃は敢えて感じることはないもの。けれどもこういう時には両親が近くにいてくれることがとても心強い。
 一人では乗り越えられないことも仲間となら乗り越えられる――なんて、極めて理想的な夢物語のような話だと思っていたけれど、案外現実的な話なのかもしれないと思う。

「アイリーン、ホットミルク持ってきたわよ」
「ありがとう! 母さん」
「砂糖は入れていないから」
「ホットミルクって砂糖なしで甘いもんね」
「そうなの、こういう時は自然な味の方がいいかもって思ったのよ、夜だし」
「いただきます。……あったかい」
「温かいものを飲んでゆっくりして、心を休めて」
「色々ごめん。そして、ありがとう。本当に。感謝しかない……ありがとう母さん」

 その後カイールとの婚約はほぼ自動的に破棄となった。
 なぜなら彼が亡くなったからだ。
 どちらかが落命したとなれば婚約という関係を続けることはできない、なので自然とそういう流れになった。

 また、後に事情を知ったカイールの親からは謝罪してもらうことができた。

 そして償いのお金も支払ってもらうことができた。

 カイールの罪はカイール自身の罪。それゆえ、心から謝ってくれている彼の両親からお金を取ることは申し訳ないような気もして。一度は「謝っていただけましたし、本人はもういないわけですから、もういいです。お金は求めません」と言ったのだけれど、向こうが「そういうわけにはいきません」と言ってきて。向こうの意思がかなり頑なであったこともあり、それを強く拒否するというのも変な話だったので最終的にはお礼を言いつつ受け取ることにしたのだった。

あなたにおすすめの小説

お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!

近藤アリス
恋愛
暴君と名高い第二王子ジェレマイアに、愛しのお嬢様が嫁ぐことに! どうにかしてお嬢様から興味を逸らすために、媚びを売ったら愛されて執着されちゃって…? 幼い頃、子爵家に拾われた主人公ビオラがお嬢様のためにジェレマイアに媚びを売り 後継者争い、聖女など色々な問題に巻き込まれていきますが 他人の健康状態と治療法が分かる特殊能力を持って、お嬢様のために頑張るお話です。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています ※完結しました!ありがとうございます!

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

恋愛初心者の恋の行方

あおくん
恋愛
魔法がある世界で生まれ育ったサラは、とあるきっかけで冒険者に憧れる。 冒険者になるために名門校といわれる王都のオーレ学園に入学し、周りが貴族だらけという環境の中、平民でありながらも優秀な成績をおさめ、そして卒業。さぁ冒険者として活動しようじゃないかという中、聖女じゃなければ倒せないと言われる魔物が現れた。 え?ソロで活動しちゃダメ?地元の同年代の人達はもうパーティー組んでいるし、そもそも実力とランクが合わない為にパーティーを組めない。一体どうやって活動していけばいいのよ!と悩んだサラの前に、学生時代のライバル…いや師匠ともいえる人が現れた。 一緒にパーティーメンバーとしてクエストやってくれるの?嬉しい!…ってアンタ騎士団所属じゃん!冒険者じゃないじゃん!…うえええ、いいの!?どうなってんだ騎士団……まぁこれからよろしくね! といった感じで冒険者になったサラと騎士団に入った男の子とのラブコメを目指しつつ、世界を平和に導く?物語です。 続きを読みたいと思っていただけたら、是非ともお気に入り登録していただけると嬉しいです! 長編への挑戦なので、応援していただけると作者のモチベーションも上がりやすくなりますので、どうぞよろしくお願いします! また投稿するまでの間に30万文字分は書いている為、ストックが尽きるまでに完結迄目指して毎日投稿していきますので、どうぞよろしくお願いします。 一話につき4000文字を超えないように調節してみましたが、文字数が多く感じられましたらすみません。 投稿時間は朝と夜の6時に更新するよう設定しています。 完結までの大体の流れは決めていますので、完結は保証させていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~

今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。 こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。 「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。 が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。 「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」 一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。 ※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。