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前編
しおりを挟む「ねぇ、貴女、オルガン様の前から消えてくださる?」
一人の女性がいきなりそんなことを言ってきた。
光が当たると僅かに藍色にも見える黒髪は長く真っ直ぐで腰の辺りまであり、頭部には羽根のついた白薔薇の髪飾りをつけている。ドレスは見るからに豪華そう、胸もとやら首まわりやら外側の布をたくし上げている部分やらにはふんだんに宝石があしらわれていて。コバルトブルーの布はシルクを染めてもののようにも見える。そして耳には爪十個分くらいの大きさのダイヤモンドのイヤリングを装着している。
「え……あの、何の話でしょうか?」
「貴女がオルガン様の婚約者なのでしょう」
「あ、はい」
「けれども貴女は彼に相応しくない……分かるでしょう? わたしを見れば分かるのではなくて?」
どうやら彼女は我が婚約者オルガンの浮気相手のようだ。
「貴女みたいな地味な女、彼の隣に立つ資格はないわ」
「そうでしょうか……」
これでも我が家は資産家だ。
土地もかなりたくさん持っている。
それでも相応しくないのだろうか。
「いいから! 今ここで! オルガン様と別れると言って!」
「ええ……」
「いいから言いなさいよ!」
「でも、ありがとうございます。貴女のおかげでオルガンさんが浮気していたことは分かりました」
「はぁ!? わたしとオルガン様は運命の番! 貴女は邪魔者!」
会話が成り立たない……。
その日は一旦帰ってもらった。
そしてすべてを親に話して。
その後父に頼んでオルガンに彼女について聞いてもらうことにした。
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