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1話
しおりを挟む「お前みたいなパッとしないやつと結婚してやるんだから、心の広い俺に感謝しろよ」
それが婚約者エデルグリーンの口癖だった。
彼は私の家柄が自分の家柄より下であることを良く思っていて、ことあるごとにそのことを持ち出しては私を見下すような言葉を発してくる。
そんな人のことを好きだと思い続けられるはずもなく。
私の心は日に日に彼から離れていって。
けれどもだからといって婚約を破棄する権利など私にはないのでただ黙っているしかなかった。
だがある時、エデルグリーンは自ら関係を壊すことを望んだ。
「お前との婚約、破棄することにしたから」
彼はある日突然自宅へ私を呼び出した。
そしてさらりとそう宣言したのだ。
「婚約破棄……」
意味もなく繰り返してしまう。
周囲には聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で。
「なぜか教えてほしい、というような顔だな。ならば教えてやろう! 俺は俺に相応しい女性を見つけたんだ!」
エデルグリーンは勝手に婚約破棄の理由を吐き始める。
問いを放っていないのに喋り出した、ということは、きっとどうしてもそれについて話したかったのだろう。
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