風が吹いたら、貴女に会いに行きますね――って、本当に来るんですかッ!? ~婚約破棄されたばかりの私の前に現れたのは~

四季

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前編

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 今日、婚約破棄された。

 ……馬鹿だった、自分一人で勝手に夢をみて。

 もっと早く気づくべきだった。
 彼は少しも私を大切に思っていないのだということに。

 ――その時、一筋の風が頬を撫でながら吹き抜けていった。

「あ」

 瞬間、思い出す。

 それは遠い過去の記憶。

 あれは確か、私がまだ三つくらいだった頃。かくれんぼ中に意地悪でいなかったことにされて泣いていた時、風が、私に語りかけてくれた。その風は「風が吹いたら、貴女に会いに行きますね」と言ってくれて、それで、勇気が出て前を向いて生きようと思えて。その日はたくさん泣いたけれど、以降はもう意地悪にも屈さず歩いてゆけるようになった。

 その時のことを思い出した、刹那。

「こんにちは」
「――あ」
「良い天気ですね、風です」

 人の姿となったそれは私の前に身を下ろす。

「約束通り、会いに来ました」
「か、風……って、あの時の?」
「そうです」
「えええ……」

 風は青年となり姿を現した。

 今まさに、目の前にいる。
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