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前編
しおりを挟む「僕はもう君を愛していないんだ!」
一つ年下の婚約者ヌトガーが無邪気にそんなことを言ってくる。
は? なんて? ――そう言いたいような気分だ。
「何よそれどういうこと?」
「飽きたんだ!」
「ええ……そんな嬉しそうに言う……?」
「言うよ! だって真実だから。本当のことを言う優しさーっていうのもあるよね! ね、僕優しいでしょ!」
いやいや……。
もうすべてがおかしい。
どこから突っ込めば良いものか。
一方的に切り捨てるようなことを急に言い出す、それは優しさなのか?
「てことで、婚約破棄するから!」
「やっぱり……」
「あ、もう伝わってた?」
「ええ、薄々」
「やっぱり僕ってすごいなぁ! そんなに表現が上手かったんだ!」
方向性がおかしい、色々。
「じゃあ話は早いね! そういうことだから! さよならっ」
こうして私は怖いくらい無邪気に婚約破棄されたのだった。
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