婚約破棄、その悲しみは歌に乗せて去らせよう。

四季

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婚約破棄、その悲しみは歌に乗せて去らせよう。

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 幼い頃から歌が好きだった。

 上手いとか下手だとかは関係ない。

 ただ、旋律を追うように歌えば、心の中の色々な悪いものが消えていくような気がして。
 歌は私の救いだったのだ。

 そんな私も十八になり、婚約した。

 それはまるで大人への一歩であるかのようで。
 嬉しかったのだけれど。

「好きな人ができてさ。ごめんな、ばいばい」

 婚約は破棄となった。

 彼にとって私は大切な人ではなかったのかもしれない。
 恋愛から始まったわけではないから仕方ないのかもしれないけれど、でも、それでも切なく悲しかった。

 でも絶望はしない。

 夜、こっそり家を抜け出して、私は一人近くの丘へ向かう。
 そして、澄んだ空のもと、懐かしい旋律を奏でる。

 歌えばすべては消えてゆく。

 悲しいこと。
 辛いこと。
 黒々としたもの。

 歌はそれらを持ち去ってくれるのだ。

 夜が明けるまで、歌い続ける。


◆終わり◆
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