最強剣士カザフさん、のんびり冒険者生活

四季

文字の大きさ
1 / 50

一話「カザフさん、魔物狩る」

しおりを挟む
「でやぁっ!」

 刃だけでも三メートル。幅は少なく見積もって六十センチ。かなりの重量がありそうな剣を振り回す男が、とある洞窟に一人。

 その名は、カザフ・フロティー。
 身長は一八○センチ超え。浅黒く岩のようにごつごつした肌に、隆起した筋肉、それはまるでゴリラのような肉体。また、頭部は、一本一本が一センチくらいしかないような黒い髪に覆われている。雲丹のような頭。

 そんな男が巨大な魔物をばったばった倒していく様は、同じ人間であっても恐ろしさを感じるような光景である。

「うぉりゃあ!」

 屈強な男であるカザフは、その容姿に相応しく、冒険者をしている。

 この世界——アスパルテムでの冒険者の仕事内容は、主に、洞窟の魔物を狩ること。逞しい体格と怪力を持つカザフにもってこいの仕事だ。

 カザフは親の顔を知らない。この世に誕生したのだから父親も母親もいたのだろうが、顔を見た記憶は少しもない。
 物心ついた時、家族のように傍にいてくれていたのは、一人の冒険者の男性だった。カザフはその男性から冒険者として自立するための知識を教わり、冒険者として細々と活動を始め。それから既に十五年が経過している。

 カザフは今、二十五歳だ。
 様々なことを教えてくれた冒険者の男性は、昨年の秋に亡くなった。

 それからちょうど一年が経つ。

「タマザウルスの鱗、タマサルウスの皮膚、タマザウルスの爪、ニャンニャンの耳、タマザウルスの耳垢……よし! 揃った!」

 カザフは倒した魔物たちから価値ある部分を取り、持ってきていた大きめの袋に詰めていく。そして、それが完了すると、袋と剣を手にゆっくりと立ち上がる。その背中は熊のよう。

「今日はたくさん集まったなぁ」


 ◆


 魔物たちから取った物でぱんぱんに膨らんだ袋を手にカザフが向かったのは、洞窟近くの村にある店。入り口には【アクセサリー・ナナ】と書かれた看板が置かれている。

「こんにちはー」

 誰もいない店に入ってゆくカザフ。その表情は穏やかそのものだ。魔物と戦っていた時のような荒々しさは完全に消え去っている。

「素材持ってきたよー」

 カザフが言うと、店の奥にあるカウンターから一人の少女がぴょこっと頭を覗かせる。

「あ! カザフさん!」

 年齢は、十六、七くらいだろうか。二つに結った長い金髪とラピスのような瞳が特徴的な少女だ。
 着ているのは、フリルがたくさんあしらわれたロリータ風のワンピース。ところどころに小さな水色のリボンがついているのを除けば、ほとんどが白い。天使のようなワンピースである。

「いたんだね。ナナちゃん」

 カザフがゆっくり手を振りながら言うと、ナナと呼ばれた少女はカウンターから出てカザフのもとまで駆けてくる。

「いたんだね、は失礼です!」

 ナナは頬を膨らませ、わざとらしく怒りを露わにする。

「ごめんごめん」
「謝る心が伝わってきません! ……でも、素材を持ってきて下さったなら水に流します」
「うん。持ってきてるよ」

 ——だが、カザフが素材を持ってきたのだと分かった瞬間、笑顔になる。

「では、袋をいただきます!」
「うん」

 ナナは、カザフから魔物の一部が詰まった袋を受け取ると、にこにこしながらカウンターの奥へ進んでいく。

 ちょうどそのタイミングでカザフは問う。

「ここ、座っていて良い?」

 すると、すぐに返ってくる。

「良いですよ! バンバン座って下さい!」
「ありがとう」

 許可を得たカザフは、店内にある木の椅子にちょこんと腰掛け、ナナが再びやって来るのを待つのだった。


 ◆


 十分ほど経過して、ナナがカザフのところへやって来る。

「タマザウルスの鱗、タマサルウスの皮膚、タマザウルスの爪、ニャンニャンの耳、タマザウルスの耳垢、完璧です!」

 ナナは二つに束ねた髪を揺らしながら反復横跳び。素材を入手できたことが、よほど嬉しかったのだろう。

「揃っていて良かったよ」
「これで今週もペンダントを作れます! カザフさん用も作りますね!」

 カザフもナナも満面の笑み。
 幸せな空気が漂っている。

「それは嬉しいな」
「どんなデザインにしようか……迷います」
「なるべく可愛くしてくれたら嬉しいな」
「もちろんです! 可愛くします!」

 そう、ナナは、アクセサリーを手作りすることで生活しているのだ。そしてカザフは、その素材を集めるために、よく洞窟へ行っている。二人は友人程度の仲だが、ちょくちょく協力し合っているのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...