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四十七話「カザフさん、冒険者としての日々」
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その後、カザフはナナから紙を受け取った。
何の変哲もない白い紙だったが、カザフはそれで、虹色糞で作った薬が入っている器に蓋をする。
そうして、薬作りを終えた。
時間はそこそこかかってしまったが、材料が多いわけでもないから、決して難しくはなくて。
カザフはナナに「夢中になってごめんね」と謝ってから、床についた。
そうして、その日は終わった。
◆
以降もカザフはずっとナナと暮らした。
もちろん、冒険者として生計を立てていくことを止めたわけではない。だから、ナナのアクセサリー屋から離れて、遠い土地へ向かうことも少なくはなかった。依頼を探して旅に出るのだ。過疎化した村にいても、依頼はなかなか来ないからである。
そんなカザフの暮らしは、忙しいもので。
けれど、多忙な中であっても、彼はナナのことを忘れたりはしなかった。
ナナと離れている夜、カザフはいつも彼女の顔を思い出す。その可憐な姿と明るい笑顔を脳裏に浮かばせては、心を落ち着けるのだ。
そうして彼は、依頼をこなして稼ぎつつ、旅に出ている期間が終わるのを待つ。
ナナに会えるのを楽しみに、毎日を生き抜くのだ。
一方、アクセサリー屋に残っているナナは、カザフの帰りをいつも待っていた。
アクセサリーを作り、時折やって来る客にそれを販売しながら、カザフが戻ってくるのを楽しみに生きる。
彼女は、家にいられない時期があるカザフを、決して責めたりはしなかった。カザフの「冒険者として生きる」人生を応援しているからである。
ナナは冒険者ではない。魔物と戦う力もない。それゆえ、カザフの仕事を直接手伝うことはできない。
それでも、少しは力になろうと考えて。
カザフが帰ってきた日には、美味しい食事を作り、可愛いアクセサリーを贈ったりもしていた。
◆
晴れた日。
カザフは今、草原にいる。
短い草だけが生えた、見晴らしのいい草原で、剣を手に大きな魔物と対峙。熊が大柄になったような魔物をじっと見つめ、攻撃するタイミングを探している。
——突如、カザフは動く。
「ど……りゃあぁぁぁッ!!」
タイミング窺っていたカザフは、魔物に一気に駆け寄る。そして、猛獣のような雄叫びをあげながら、太く長い剣を豪快に振った。
飛び散るは、魔物の涎。
透明な粘度の高い液体が宙を舞う。
大地を揺らすような断末魔の叫びを発し、魔物は崩れるように倒れた。倒れた衝撃によって、地面が僅かに揺れる。
「……ふぅ。あと何体だったかな」
カザフは「最近草原に出現する凶暴な魔物を倒してほしい」という依頼を受けていて、その凶暴な魔物を狩っていっているところだ。
今回の依頼は、普通の冒険者なら受けようとは思わないような依頼だった。魔物と戦うことには慣れていても、皆、敢えて凶暴な魔物と対峙しようとは思わないのである。今回の依頼は、受ける者がずっとおらず残っていたので、カザフが受けたのだ。
「ええと……」
目の前の一体を倒したカザフは、上衣のポケットから一枚の紙を取り出す。黄ばんだ紙切れである。そこには、依頼の内容が丁寧な字で書かれていた。
【現在確認されているのは十匹です。なので、十匹倒して下さった方には、報酬をお渡しします】
それを読んで依頼内容を再確認したカザフは、紙切れをポケットにしまう。
「今のが五匹目だから……今で半分だな」
獰猛な魔物を一人で倒し続けるというのは、若干辛くもある。まともにやり合えば負けることはないと分かっていても、不安が完全に消え去るわけではないのだ。
ただ、それでも、カザフは投げ出したりはしない。
戦うのは一人でも、心の中にはナナがいる。いつだって記憶の中のナナが笑いかけてくれるから、カザフは孤独ではない。
「よし! もうちょっと頑張ろう!」
カザフは改めて誓い、魔物の捜索を続けるのだった。
◆
数時間後、熊に似た魔物を十体倒しきったカザフは、依頼主のところへ向かう。受けた依頼が完了した、ということを、速やかに報告せねばならないからだ。
ちなみに、カザフが向かったのは最寄りの町の酒場である。
「依頼完了しました」
「もう完了! これは早い!」
カザフがほんの数時間で依頼を終わらせてきたことに、依頼主の男性は驚く。
依頼主の男性は三十代。
外向きにはねた茶色いショートヘアとそこそこ整った中性的な顔立ちが印象的な人だ。
襟のある白いシャツの上に、花の刺繍が施されたうぐいす色のベストを着用し、灰色と茶色を混ぜたような色みのズボンを穿いて。
そんな地味めな服装であっても、爽やかなかっこよさがある——カザフはそう感じている。
容姿で勝負したら勝てないかもしれない、と、カザフは思っているけれど。でも、さほど気にしていない。カザフは容姿など気にしないタイプなのだ。
「これが証拠です」
「おぉ、これは……!」
「魔物の骨の一部です。何か持ってきておいた方が良いかと」
「それは助かる! 感謝!」
男性はそれまでより明るい顔つきになりながら、カザフが持っている魔物の骨の一部を受け取った。
彼はそれから、傍の床に置いていたお金が入った袋を手に取り、持ち上げる。そして、カザフに差し出した。
「では報酬を!」
カザフは、「ありがとうございます」と礼を述べながら、その袋を貰う。失礼がないように、両手で丁寧に受け取っていた。
「本当に助かった。感謝する」
「いえいえ。また機会あれば、よろしくお願いします」
何の変哲もない白い紙だったが、カザフはそれで、虹色糞で作った薬が入っている器に蓋をする。
そうして、薬作りを終えた。
時間はそこそこかかってしまったが、材料が多いわけでもないから、決して難しくはなくて。
カザフはナナに「夢中になってごめんね」と謝ってから、床についた。
そうして、その日は終わった。
◆
以降もカザフはずっとナナと暮らした。
もちろん、冒険者として生計を立てていくことを止めたわけではない。だから、ナナのアクセサリー屋から離れて、遠い土地へ向かうことも少なくはなかった。依頼を探して旅に出るのだ。過疎化した村にいても、依頼はなかなか来ないからである。
そんなカザフの暮らしは、忙しいもので。
けれど、多忙な中であっても、彼はナナのことを忘れたりはしなかった。
ナナと離れている夜、カザフはいつも彼女の顔を思い出す。その可憐な姿と明るい笑顔を脳裏に浮かばせては、心を落ち着けるのだ。
そうして彼は、依頼をこなして稼ぎつつ、旅に出ている期間が終わるのを待つ。
ナナに会えるのを楽しみに、毎日を生き抜くのだ。
一方、アクセサリー屋に残っているナナは、カザフの帰りをいつも待っていた。
アクセサリーを作り、時折やって来る客にそれを販売しながら、カザフが戻ってくるのを楽しみに生きる。
彼女は、家にいられない時期があるカザフを、決して責めたりはしなかった。カザフの「冒険者として生きる」人生を応援しているからである。
ナナは冒険者ではない。魔物と戦う力もない。それゆえ、カザフの仕事を直接手伝うことはできない。
それでも、少しは力になろうと考えて。
カザフが帰ってきた日には、美味しい食事を作り、可愛いアクセサリーを贈ったりもしていた。
◆
晴れた日。
カザフは今、草原にいる。
短い草だけが生えた、見晴らしのいい草原で、剣を手に大きな魔物と対峙。熊が大柄になったような魔物をじっと見つめ、攻撃するタイミングを探している。
——突如、カザフは動く。
「ど……りゃあぁぁぁッ!!」
タイミング窺っていたカザフは、魔物に一気に駆け寄る。そして、猛獣のような雄叫びをあげながら、太く長い剣を豪快に振った。
飛び散るは、魔物の涎。
透明な粘度の高い液体が宙を舞う。
大地を揺らすような断末魔の叫びを発し、魔物は崩れるように倒れた。倒れた衝撃によって、地面が僅かに揺れる。
「……ふぅ。あと何体だったかな」
カザフは「最近草原に出現する凶暴な魔物を倒してほしい」という依頼を受けていて、その凶暴な魔物を狩っていっているところだ。
今回の依頼は、普通の冒険者なら受けようとは思わないような依頼だった。魔物と戦うことには慣れていても、皆、敢えて凶暴な魔物と対峙しようとは思わないのである。今回の依頼は、受ける者がずっとおらず残っていたので、カザフが受けたのだ。
「ええと……」
目の前の一体を倒したカザフは、上衣のポケットから一枚の紙を取り出す。黄ばんだ紙切れである。そこには、依頼の内容が丁寧な字で書かれていた。
【現在確認されているのは十匹です。なので、十匹倒して下さった方には、報酬をお渡しします】
それを読んで依頼内容を再確認したカザフは、紙切れをポケットにしまう。
「今のが五匹目だから……今で半分だな」
獰猛な魔物を一人で倒し続けるというのは、若干辛くもある。まともにやり合えば負けることはないと分かっていても、不安が完全に消え去るわけではないのだ。
ただ、それでも、カザフは投げ出したりはしない。
戦うのは一人でも、心の中にはナナがいる。いつだって記憶の中のナナが笑いかけてくれるから、カザフは孤独ではない。
「よし! もうちょっと頑張ろう!」
カザフは改めて誓い、魔物の捜索を続けるのだった。
◆
数時間後、熊に似た魔物を十体倒しきったカザフは、依頼主のところへ向かう。受けた依頼が完了した、ということを、速やかに報告せねばならないからだ。
ちなみに、カザフが向かったのは最寄りの町の酒場である。
「依頼完了しました」
「もう完了! これは早い!」
カザフがほんの数時間で依頼を終わらせてきたことに、依頼主の男性は驚く。
依頼主の男性は三十代。
外向きにはねた茶色いショートヘアとそこそこ整った中性的な顔立ちが印象的な人だ。
襟のある白いシャツの上に、花の刺繍が施されたうぐいす色のベストを着用し、灰色と茶色を混ぜたような色みのズボンを穿いて。
そんな地味めな服装であっても、爽やかなかっこよさがある——カザフはそう感じている。
容姿で勝負したら勝てないかもしれない、と、カザフは思っているけれど。でも、さほど気にしていない。カザフは容姿など気にしないタイプなのだ。
「これが証拠です」
「おぉ、これは……!」
「魔物の骨の一部です。何か持ってきておいた方が良いかと」
「それは助かる! 感謝!」
男性はそれまでより明るい顔つきになりながら、カザフが持っている魔物の骨の一部を受け取った。
彼はそれから、傍の床に置いていたお金が入った袋を手に取り、持ち上げる。そして、カザフに差し出した。
「では報酬を!」
カザフは、「ありがとうございます」と礼を述べながら、その袋を貰う。失礼がないように、両手で丁寧に受け取っていた。
「本当に助かった。感謝する」
「いえいえ。また機会あれば、よろしくお願いします」
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