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しおりを挟む「俺は彼女を選ぶ。それゆえ、お前との婚約は破棄とすることにした」
婚約者エルグナーに呼び出されたと思ったら、彼の隣には何やら彼と親しそうな知らない女がいて、そんな宣言をされてしまった。
「え……そ、それは一体、どういう……?」
「言った通りの意味だ」
「では、婚約破棄ということで……本気、なのですか?」
「ああ。その通り。そういうことだ」
信じられなかった。
あまりにも唐突で。
澄みきった空の下、告げられたのは、心を叩き壊すようなことで。
「俺はお前よりこの女性を選ぶんだ。自分の人生くらい自分で選びたい。だから、な? 理解してくれ、分かってくれよ」
女性はエルグナーの片腕にしがみつくようにしてこちらをじっとりと見ていた。
その視線にはどこか勝ち誇ったような色が滲んでいる。
彼女は私に勝ったと思っているのだろう。
そしてそれを誇らしく思っている部分があるのだろう。
だからそんな目をするのだと思う。
「ええ、分かりました、じゃあ――婚約は破棄ということで」
こぼれそうになる涙を力技で呑み込んで。
「ああそうしてくれ」
「承知しました。……さようなら」
私は彼の前から去った。
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