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後編
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「何を言い出すんだ! そんなことしない! 俺は、俺は……たとえ傷ついた君だとしても、君が良いんだ。君が生きている限り……いや、たとえ生きていなくても、それでも君と一緒になる!」
ムーロは結婚をやめる気はないようだった。
何だかとても申し訳ない。
「あ、もちろん、結婚式の日を変えた方が良ければそこは考えるよ」
「……ムーロ」
「君が一番辛いだろう? 今はゆっくり休んでほしい。で、元気になってから、改めて考えよう。その方が良い」
切り捨てられる覚悟はしていた。
でも彼はそうはしなかった。
それは私にとって救いだったが、それと同時に大きな驚きでもあった。
これまで見てきた男性は皆女性を容姿や美しさだけで見ていた。怪我したことでふられた女性も見たことがある。だから、傷がついたら私もそうなってしまうのだと、切り捨てられて当然なのだと思っていた。
でも違って。
ムーロは傷ものになった私でも受け入れてくれるという。
「ごめんなさいムーロ。……ありがとう」
治療のこともあって、結婚式は一旦延期となった。
だが、かなり回復してきた頃に、改めて式を行うこととなった。
もちろん完治はしない。
それほどの傷だ。
けれども、彼の思いやりのおかげで、心まで傷だらけになることは避けられた。
温かな彼に感謝している。
「明日、結婚式だね」
「ええ……」
「何か不安かい?」
「いいえ、ただ……本当に私で良かったのかな、と思うことはあるの」
そう言うと、彼は笑う。
「もちろん! 当然だろう!」
◆終わり◆
ムーロは結婚をやめる気はないようだった。
何だかとても申し訳ない。
「あ、もちろん、結婚式の日を変えた方が良ければそこは考えるよ」
「……ムーロ」
「君が一番辛いだろう? 今はゆっくり休んでほしい。で、元気になってから、改めて考えよう。その方が良い」
切り捨てられる覚悟はしていた。
でも彼はそうはしなかった。
それは私にとって救いだったが、それと同時に大きな驚きでもあった。
これまで見てきた男性は皆女性を容姿や美しさだけで見ていた。怪我したことでふられた女性も見たことがある。だから、傷がついたら私もそうなってしまうのだと、切り捨てられて当然なのだと思っていた。
でも違って。
ムーロは傷ものになった私でも受け入れてくれるという。
「ごめんなさいムーロ。……ありがとう」
治療のこともあって、結婚式は一旦延期となった。
だが、かなり回復してきた頃に、改めて式を行うこととなった。
もちろん完治はしない。
それほどの傷だ。
けれども、彼の思いやりのおかげで、心まで傷だらけになることは避けられた。
温かな彼に感謝している。
「明日、結婚式だね」
「ええ……」
「何か不安かい?」
「いいえ、ただ……本当に私で良かったのかな、と思うことはあるの」
そう言うと、彼は笑う。
「もちろん! 当然だろう!」
◆終わり◆
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