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後編

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 ◆


 次に目覚めた時、季節が移り変わっていた。

 あの晩餐会は春だった。
 しかし目覚めた時には既に夏が訪れていたのだ。

 そして私は母から聞くこととなる。

 カインがもうこの世にいないことを。
 そして自ら死んだのだということを。

 カインはあの時私に対して批判的な暴言を吐き続けたが、その後、好きだった女性から「あんな酷い人とは思わなかった、最低ね」と言われてしまい、結婚を申し込むもあっさり断られてしまったそうだ。

 それで絶望し、死ぬことを選んだのだとか。

 結局彼は彼自身の行いによって身を滅ぼすこととなったのである。

 まぁでも他人を傷つけたのだからそのくらいの報いは受けるべきだろう。
 あそこまで酷いことをしたカインが順調な人生を歩めるというのなら、この世界はあまりにも理不尽過ぎる。


 ◆


 その年の冬、私は、心から愛せる人と婚約した。

「エンフォーニカ、今日も可愛いな。その青いワンピース、とっても似合ってるぞ」
「ありがと」
「ま、あんたは何着てても最高だけどよ」
「いつも褒めてくれるわね」
「まぁな。似合ってるってのも最高ってのも事実だからな、そりゃまぁ普通にばんばん褒めるわ」

 一緒にいられる時間はとても心地よくて楽しい。
 生きる幸福とはこういうものなのだと教えてもらえているかのよう。

「褒めたい時には褒める、それが俺の生き方なんだ。自分で言うのも何だが、俺はそれなりに正直者なんだよ」

 彼は元々狩人であった。

 でもとても心優しい人。
 理不尽に他者を傷つけるようなことはしない。

 だからこそ生涯のパートナーに相応しい。


◆終わり◆
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