2 / 2
後編
しおりを挟む
「……ない」
「はぁー!? 今なーんてぇー? 何か言いましたぁー?」
母には後で謝ろうと思う。
「私はもう、あなたを許せない!!」
両手を開く。
指先から溢れる炎に似た青い輝き。
「婚約は破棄します!!」
魔力のみならず腕力でも何でもそうだが、力ある者には責任も伴う。それがなければ力ある者が周囲を蹂躙できてしまうから。何でもありの世界になってしまうから。
それは分かっているけれど。
でも、尊厳を踏みにじられ続けて耐えられるかというと、そうではない。
私にだって人格はある。
私にだって心もある。
「さようなら!!」
私は生まれて初めて本気で魔法を使った。
手から溢れ出した炎に似たエネルギーは、あっという間に辺りを熱で包み込み、すべてを灰にした。この凄まじい魔力の前では、人間も物体も大きいも小さいも無関係。この魔力は、我が魔法は、何もかもを焼き尽くすのだ。
その後私は犯罪者として牢に入れられた。
しかし、アブリルらが彼の婚約者である私を虐めていた証拠や証言が多くあがってきたことで、減刑された。
何をされるでもなく牢から出られた私は、多くの魔法士が所属する部隊に入り、そこで国を護るために働くことを選んだ。
償いのためだ。
本当はあの力を使うべきではなかった。
でも我慢できず。
忍耐力不足で使ってしまった。
母を貶めたアブリルを終わらせたことを後悔はしていないけれど、少しは償いたくて、国のため生きることを選んだのである。
◆
それから数年。
私はその強大な魔力ゆえに民から『国の守護神』と呼ばれるようになっていった。
多くの国民は私に良い感情を抱いてくれているようで。
私を受け入れてくれる彼ら彼女らの笑顔を見るたびに、強く、もっと頑張ろうと思えた。
そういえば、ここ数年やたらと婚約希望者が現れるのだが、今のところすべて断っている。なぜなら、国を護ることこそが私の道だからである。
◆終わり◆
「はぁー!? 今なーんてぇー? 何か言いましたぁー?」
母には後で謝ろうと思う。
「私はもう、あなたを許せない!!」
両手を開く。
指先から溢れる炎に似た青い輝き。
「婚約は破棄します!!」
魔力のみならず腕力でも何でもそうだが、力ある者には責任も伴う。それがなければ力ある者が周囲を蹂躙できてしまうから。何でもありの世界になってしまうから。
それは分かっているけれど。
でも、尊厳を踏みにじられ続けて耐えられるかというと、そうではない。
私にだって人格はある。
私にだって心もある。
「さようなら!!」
私は生まれて初めて本気で魔法を使った。
手から溢れ出した炎に似たエネルギーは、あっという間に辺りを熱で包み込み、すべてを灰にした。この凄まじい魔力の前では、人間も物体も大きいも小さいも無関係。この魔力は、我が魔法は、何もかもを焼き尽くすのだ。
その後私は犯罪者として牢に入れられた。
しかし、アブリルらが彼の婚約者である私を虐めていた証拠や証言が多くあがってきたことで、減刑された。
何をされるでもなく牢から出られた私は、多くの魔法士が所属する部隊に入り、そこで国を護るために働くことを選んだ。
償いのためだ。
本当はあの力を使うべきではなかった。
でも我慢できず。
忍耐力不足で使ってしまった。
母を貶めたアブリルを終わらせたことを後悔はしていないけれど、少しは償いたくて、国のため生きることを選んだのである。
◆
それから数年。
私はその強大な魔力ゆえに民から『国の守護神』と呼ばれるようになっていった。
多くの国民は私に良い感情を抱いてくれているようで。
私を受け入れてくれる彼ら彼女らの笑顔を見るたびに、強く、もっと頑張ろうと思えた。
そういえば、ここ数年やたらと婚約希望者が現れるのだが、今のところすべて断っている。なぜなら、国を護ることこそが私の道だからである。
◆終わり◆
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
虐げられた聖女が魔力を引き揚げて隣国へ渡った結果、祖国が完全に詰んだ件について~冷徹皇帝陛下は私を甘やかすのに忙しいそうです~
日々埋没。
恋愛
「お前は無能な欠陥品」と婚約破棄された聖女エルゼ。
彼女が国中の魔力を手繰り寄せて出国した瞬間、祖国の繁栄は終わった。
一方、隣国の皇帝に保護されたエルゼは、至れり尽くせりの溺愛生活の中で真の力を開花させていく。
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる