「君よりもっと条件が良くて愛おしい魅力的な女性に巡り会えたんだ、それだけさ」と婚約者は婚約破棄の理由を話しました。

四季

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前編

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「悪いけど、君との婚約は破棄とさせてもらうよ」

 婚約者ヴォルドフの口からそんな言葉が出たのはある夏の日だった。

「え……こ、婚約破棄、ですか? そんな、どうして……」

 まさかの展開に驚き戸惑って、そんなテンプレート的な言葉を返してしまう。

 すると彼はどこか勝ち誇ったような満足したような顔をした。

「理由はただ一つ、簡単なことだよ」
「何でしょうか」
「君よりもっと条件が良くて愛おしい魅力的な女性に巡り会えたんだ、それだけさ」

 彼はシンプルな理由を口にした。

 そして続ける。

「彼女はエデリーナと言うのだがね、良家のお嬢さんで、しかもとても美しいんだ。あんな素晴らしい女性、見たことがない。きっとこれは運命なんだ、彼女と生きろと神が言っているんだよ」

 そう語るヴォルドフは夢でもみているかのような面持ちだった。

 でも――確信はあった、きっともう彼の心は私に戻らない、と。

 彼はエデリーナというその女性に惚れきってしまっている。一度そうなった心をこちら側へ取り戻すというのは容易なことではない。それに、そのような無駄に近い努力のために限りある時間を費やすというのも勿体ない気がして。

「そうですか、では私は去りますね」

 だから私は婚約破棄を受け入れることにした。

「ただし、慰謝料は支払ってください」
「いいさそのくらい! 支払うとも! なんせ、運命のためだからね」

 こうして私たちの縁は切れた。

 私は彼に慰謝料を支払ってもらい、彼の前から去った。
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