「君よりもっと条件が良くて愛おしい魅力的な女性に巡り会えたんだ、それだけさ」と婚約者は婚約破棄の理由を話しました。

後編

「あの娘、婚約破棄されたんですって。可哀想にね」
「酷い男もいたものねぇ」
「あんなに可愛らしい娘さんなのに……」

　そんな風に同情されることもあったけれど、なるべく気にせず、善意の部分だけを受け取って過ごすようにした。

　誰も、悪意だけで言葉を発しているわけじゃない。
　そう分かっているから。
　だから、なるべく、良い部分だけを受け取って感じ取って生きていれば良いのだと思う。

　その方が生きやすい。

　婚約が破棄になったからといって死ぬわけではないのだから――前を向いて生きていこう、きっとその先のこそ幸福はある。


　◆


　――あれから五年が経過した。

　私は今、資産家の青年と結婚し、穏やかな日々を楽しんでいる。

　彼と出会ったのはあるパーティー。
　親戚のお姉さんに誘ってもらった会にて彼と出会った。

　先に声をかけてくれたのは彼だった。

　最初は話しかけられたから話しているというくらいのものだったのだが、次第に心惹かれるようになり、やがて恋仲となった。そして、一年ほどの交際期間を経て婚約、結ばれる方向へと話は進み始めて。そのまま夫婦となるところにまで至ったのだ。

　あ、そうそう、そういえば。

　エデリーナと結婚しようとしたヴォルドフは、結婚した数日後に彼女の実家の家業が反社会的なものだと知ったそうだが――時既に遅し、今さら逃れることもできず、彼もまたその家業に従事させられることとなってしまったそうだ。

　で、ある時逮捕されてしまったそうなのだが。

　その時、エデリーナとその実家は、ヴォルドフを助けてはくれなかったのだそうだ。

　ヴォルドフは見捨てられたのである。

　そうして彼は犯罪者となり、今も牢屋に入れられているのだとか。

　人生とは分からないものだなぁ、と、つくづく思う。


◆終わり◆