上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む

 ――そして今。

「君との婚約は破棄するよ」
「どうして?」
「見て分かるだろう? この彼女を愛しているからだ」
「そちらの方ね」
「そうだ。それだけの理由、しかし、重大なことだ。彼女を差し置いて、婚約者と結ばれるなど絶対に無理なのだ」

 婚約者リーズから関係解消を迫られている。

「そう、でも……少し納得できないわね」
「なぜだ」
「だって、貴方の家に援助してきたじゃない。お金」
「それはもう止めてもらっていい」
「でもこれまでに出した分があるでしょ?」
「それはもう過去のことだ、忘れてくれ」

 刹那、リーズの横にいた女が。

「あんた鬱陶しいのよ! ちんたらちんたら話長引かせて。しつこいっ! いい加減にしてっ! さっさとリーズ様から離れなさいよっ!!」

 付近にあったワインの瓶を手に殴りかかってきた。

 ここで使う気はなかったが――攻撃されるならやむを得ない。

「アポルポポストルテニロレストポロレストリリストロポロセス!」

 すると女は手にしていたワイン瓶で急に自分の頭頂部を殴って倒れた。

「お、お前! 彼女に何をした!」
「呪文を唱えただけよ。それに、これは身を護るため。暴力行為でも不正使用でもないの」
「ふ……ふざけるなああああああ!!」

 地面に落ちた瓶、女の血がついた瓶を拾い、今度はリーズが襲いかかってくる。

「アポルポポストルテニロレストポロレストリリストロポロセス!」

 するとリーズは手にしていた瓶で自らの身体を何度も叩き、やがてバランスを崩して倒れ――静かになった。


 ◆


 あれから数年、私は今穏やかに暮らせている。

 毎日はとても楽しい。

 愛する人――誰よりも愛おしい夫と共に、広い庭の見える一軒家に住んでいる。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...