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10話「そして婚約は発表される」
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あれから時間が経ち、ようやく、私とアルフレートの婚約が発表される日が来た。
その日はかなり騒ぎになったようだった。
めでたい報告を喜ぶ者、憧れの王子の婚約にがっかりする者、特別興味はないが賑やかにするのが好きで騒いでいる者、無関心な者――国民の反応も人それぞれだったようだ。
ちなみに私はというと、仕事は継続することにした。
理由としては、予約が入っていたということもあるし、現在定期的に通っている者がいるということもある。
ただ、仕事を続けることは許されたものの、それまでに比べて警備が強化された。王子の妻となる人を放っておくことはできない、とのことであった。そんな事情もあり、のんびり一人で過ごすことはできなくなってしまった。仕事させてもらえるだけありがたいと思わなくてはならないのだけれど、それでも少し残念に感じる時もある。一人のんびりする時間もそこそこ良いものだったのだ。
そんなある日。
私はその時人間の姿のアルフレートと共に部屋の中にいた。
「今日はもうすぐお客さんが来るの?」
「ええ」
「そっか! じゃあ対応中はうさぎ風になって置物のふりをしておくからね」
「ごめんなさいね、いつも」
「ううん! いいんだ。ぼくはきみがきみらしく生きられることを望んでいるよ!」
「……ありがとうアルフレート」
そんな何ということのない会話をしていたその時、突如入り口の扉が開いた。
「あ、お客さ――危ないっ!」
アルフレートが立ち上がり去ろうとした瞬間、小型の刃物が飛んできた。それは明らかに私を狙っていた。が、人の姿のアルフレートが咄嗟に前に出て、盾となってくれた。しかしそれによってアルフレートは胸もとを刺されてしまう。飛んできていたものが胸もとに命中してしまったのだ。
「っ……」
そして私は気づく。
入ってきていた男性が予約していたお客さんではなく――かつて私を切り捨てたアドムだということに。
「久しぶりだな、ルレツィア」
「アドム……どうして貴方が……」
負の意味で懐かしい顔を目にして嫌な気分になっていると、アルフレートはその場で崩れ落ちた。
「アルフレート!!」
思わず悲鳴をあげてしまう。
その声を聞いて外から警備の者が駆け込んでくる。
「何事です!」
良かった、気づいてもらえた!
……でも逃げられたらまずい。
今はまだ安心しきってはいられない。
「そこの男、不審者です! 捕まえてください!」
叫ぶ。
「貴様! じっとしろ!」
一人目の警備の者がアドムを地面に押し倒す。その音により外の者たちもその多くが異変に気づいたようで、警備の者がさらに数人室内へ駆け込んできた。アドムは四肢を振り回して抵抗するが、何人もの男に押さえつけられてはまともには抵抗できない。
「黙れッ! 魔女は消さねばならないんだ! 穢れた女が! 魔女が! そんなやつが権力を持てばこの国はおしまいだッ!」
拘束されたアドムは異様な目つきで叫び倒す。
「俺は国を護るために魔女を消す! 騙されている王子の目を今覚めさせなくてはすべてが壊れてしまう! そのようなこと! 絶対に許されないッ!! ああそうだ俺は英雄なんだこの国を護るためになら何でもできるほどの愛国心を持つ男なんだ――魔女は消すッ! 穢らわしい女は死ねぇッ!!」
過激で違和感しかない言葉を並べるアドムを見ていたらこちらまでどうにかなってしまいそうだったので、私はアルフレートの方へ意識を向けることにした。
「アルフレート! アルフレート! しっかり!」
「……だ、大丈夫大丈夫、このくらい……どうってことないよ、まぁ……痛いことは痛いけどね……はは」
幸いアルフレートは意識を失ってはいなかった。
声をかけると言葉を返してくる。
「アルフレート……」
「ルレツィアさん……怪我、してない……?」
「ええ、私は無事、あなたのおかげよ」
「……へへ、良かった、護れた……かな……」
場所が場所だ、一撃で仕留められる可能性だってあった。
そうならずに済んだのは不幸中の幸い。
「アルフレート、待って、すぐに手当てをするわ」
「……手当、て」
「そうよ。魔法を使うの。魔法を使えばきっと治るわ」
その日はかなり騒ぎになったようだった。
めでたい報告を喜ぶ者、憧れの王子の婚約にがっかりする者、特別興味はないが賑やかにするのが好きで騒いでいる者、無関心な者――国民の反応も人それぞれだったようだ。
ちなみに私はというと、仕事は継続することにした。
理由としては、予約が入っていたということもあるし、現在定期的に通っている者がいるということもある。
ただ、仕事を続けることは許されたものの、それまでに比べて警備が強化された。王子の妻となる人を放っておくことはできない、とのことであった。そんな事情もあり、のんびり一人で過ごすことはできなくなってしまった。仕事させてもらえるだけありがたいと思わなくてはならないのだけれど、それでも少し残念に感じる時もある。一人のんびりする時間もそこそこ良いものだったのだ。
そんなある日。
私はその時人間の姿のアルフレートと共に部屋の中にいた。
「今日はもうすぐお客さんが来るの?」
「ええ」
「そっか! じゃあ対応中はうさぎ風になって置物のふりをしておくからね」
「ごめんなさいね、いつも」
「ううん! いいんだ。ぼくはきみがきみらしく生きられることを望んでいるよ!」
「……ありがとうアルフレート」
そんな何ということのない会話をしていたその時、突如入り口の扉が開いた。
「あ、お客さ――危ないっ!」
アルフレートが立ち上がり去ろうとした瞬間、小型の刃物が飛んできた。それは明らかに私を狙っていた。が、人の姿のアルフレートが咄嗟に前に出て、盾となってくれた。しかしそれによってアルフレートは胸もとを刺されてしまう。飛んできていたものが胸もとに命中してしまったのだ。
「っ……」
そして私は気づく。
入ってきていた男性が予約していたお客さんではなく――かつて私を切り捨てたアドムだということに。
「久しぶりだな、ルレツィア」
「アドム……どうして貴方が……」
負の意味で懐かしい顔を目にして嫌な気分になっていると、アルフレートはその場で崩れ落ちた。
「アルフレート!!」
思わず悲鳴をあげてしまう。
その声を聞いて外から警備の者が駆け込んでくる。
「何事です!」
良かった、気づいてもらえた!
……でも逃げられたらまずい。
今はまだ安心しきってはいられない。
「そこの男、不審者です! 捕まえてください!」
叫ぶ。
「貴様! じっとしろ!」
一人目の警備の者がアドムを地面に押し倒す。その音により外の者たちもその多くが異変に気づいたようで、警備の者がさらに数人室内へ駆け込んできた。アドムは四肢を振り回して抵抗するが、何人もの男に押さえつけられてはまともには抵抗できない。
「黙れッ! 魔女は消さねばならないんだ! 穢れた女が! 魔女が! そんなやつが権力を持てばこの国はおしまいだッ!」
拘束されたアドムは異様な目つきで叫び倒す。
「俺は国を護るために魔女を消す! 騙されている王子の目を今覚めさせなくてはすべてが壊れてしまう! そのようなこと! 絶対に許されないッ!! ああそうだ俺は英雄なんだこの国を護るためになら何でもできるほどの愛国心を持つ男なんだ――魔女は消すッ! 穢らわしい女は死ねぇッ!!」
過激で違和感しかない言葉を並べるアドムを見ていたらこちらまでどうにかなってしまいそうだったので、私はアルフレートの方へ意識を向けることにした。
「アルフレート! アルフレート! しっかり!」
「……だ、大丈夫大丈夫、このくらい……どうってことないよ、まぁ……痛いことは痛いけどね……はは」
幸いアルフレートは意識を失ってはいなかった。
声をかけると言葉を返してくる。
「アルフレート……」
「ルレツィアさん……怪我、してない……?」
「ええ、私は無事、あなたのおかげよ」
「……へへ、良かった、護れた……かな……」
場所が場所だ、一撃で仕留められる可能性だってあった。
そうならずに済んだのは不幸中の幸い。
「アルフレート、待って、すぐに手当てをするわ」
「……手当、て」
「そうよ。魔法を使うの。魔法を使えばきっと治るわ」
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