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11話「きみがぼくを救ってくれたんだ」
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アドムによる襲撃事件は犯人である彼が拘束されたことで何とか終わる。
アルフレートは負傷したが命に関わるほどのものではなかった。
とはいえ、王子とその婚約者が男に襲われるという事件は国民らを動揺させ、連日情報紙ではそのことが報道されていたようだ。
今、私は城にいる。
そこは医務室だ。
医務室にあるベッドにアルフレートは横たえられている。
「アルフレート……ごめん、なさい」
婚約者ということもあり私は彼と会って話すことを許可してもらえた。
彼を放置することなんてできなくてこうして二人になることを選んだけれど、どうしても申し訳なくて気まずくて、なかなか彼を直視できない。
「気にしないで、こちらこそごめん」
「どうして……」
「心配させてしまって悪いなーと思って。でも、もう、本当に大丈夫だから。あ、そうそう! あの時は魔法で応急処置してくれてありがとう!」
「でも……あなたが傷ついたのはそもそも私のせいだわ」
「そんなわけないよ!」
アルフレートはがばっと上半身を持ち上げる――瞬間、顔をしかめた。
「大丈夫!?」
胸を縮めるようにして面に苦痛の色を滲ませるアルフレートの背を撫でる。
「やはりまだ痛むのね」
取り敢えず何度も背中を擦る。
それで苦痛が消えるわけではないだろうけど。
「……何かごめん」
胸を縮めるような体勢のままアルフレートは俯いた。
「いいえ、そんなこと言わないで。あなたは悪くないの。それより、急に動いては駄目よ。身体に良くないわ」
そう返すと、彼は面を上げる。
「ありがとうルレツィアさん」
そして笑みを浮かべた。
「またきみに助けられてしまったね」
「助けられたのは私よ、庇ってもらったんだもの」
彼の笑みを見ていると心が穏やかになる。
この平穏を、この愛しい笑みを、失いたくない――強くそう願う。
「違うよ。きみがぼくを救ってくれたんだ。あの時も、今回も、同じ」
それからもアルフレートは必要な治療を着実に受けた。当然だ、王子だから。その位ゆえ、誰よりも良い治療を受けられるのである。と言っても、幸いそこまで複雑な状態ではないのでそこまでややこしい治療が求められたわけではなかったのだけれど。
そして、次に問題となったのは、この事件の犯人であるアドムをどうするかであった。
処刑するのか否か――最終的に決めるのは国王だ。
もちろん、被害者であるアルフレートの意見も取り入れられる。
アルフレートはアドムを許さないと言った。けれどもその訳は己が傷つけられたからではなく。私に対して酷いことを言い放ったから、というものであった。彼はそういう意味でアドムに対して怒りを抱いていた。
そうして、アドムは処刑、ということとなった。
話し合いを重ねた末の決定であった。
そして数週間後、アドムは、王子を傷つけた罪と王子の婚約者を侮辱した罪の罰として首を断たれることとなった。
私が実際にそこに立ち合ったわけではないけれど、最期を迎える時、アドムは「死にたくない!」と喚き酷く暴れていたそうだ。
死にたくない、は分かる。それは人間として当然の感情だ。死が迫れば誰でもそう思うだろう、よほどの事情がない限り。だから、死にたくないと思い発すること自体は、おかしなことではないと思う。
でも、そう思える心があるなら、なぜ他者を傷つける行動に出たのか。
自身が傷つくのは嫌なのに他者を傷つけるのは許されるのか?
そんなわけがない。
そもそも、彼が処刑となったのは、彼自身が他者を傷つけるようなことをしたから。そして実際に傷つけたから。せめて思考だけに留めておけば良かったのに、彼はそれを行動に移した。それがすべての始まり。
だから、たとえ死を与えられても、自業自得だ。
また、アドムが処刑された直後からアドムが生前加入していたと言われている団体『魔法使いは穢らわしいので国のために滅ぼすべきと皆に教える会』の活動が急激に過激化したそうで。その会の者たちは、「平和的な主張のため」と言いつつ街を練り歩き、次第にエスカレートして暴れまわったそうだ。棒で店の窓を破壊したり、強盗紛いのことをしたり、と、その行いはとにかく酷かったようで。その結果、多くの会員が拘束され、団体も解散させられることとなったそうだ。
そして、これは後に知ったことだが、拘束された会員の中にはアドムの母親もいたそうだ。しかもそこそこ地位のある会員だったようで。彼女もまた過激な行いを推奨していた一人だったそう。そういう事情もあって、アドムの母親もまた、後に処刑されたそうだ。
アルフレートは負傷したが命に関わるほどのものではなかった。
とはいえ、王子とその婚約者が男に襲われるという事件は国民らを動揺させ、連日情報紙ではそのことが報道されていたようだ。
今、私は城にいる。
そこは医務室だ。
医務室にあるベッドにアルフレートは横たえられている。
「アルフレート……ごめん、なさい」
婚約者ということもあり私は彼と会って話すことを許可してもらえた。
彼を放置することなんてできなくてこうして二人になることを選んだけれど、どうしても申し訳なくて気まずくて、なかなか彼を直視できない。
「気にしないで、こちらこそごめん」
「どうして……」
「心配させてしまって悪いなーと思って。でも、もう、本当に大丈夫だから。あ、そうそう! あの時は魔法で応急処置してくれてありがとう!」
「でも……あなたが傷ついたのはそもそも私のせいだわ」
「そんなわけないよ!」
アルフレートはがばっと上半身を持ち上げる――瞬間、顔をしかめた。
「大丈夫!?」
胸を縮めるようにして面に苦痛の色を滲ませるアルフレートの背を撫でる。
「やはりまだ痛むのね」
取り敢えず何度も背中を擦る。
それで苦痛が消えるわけではないだろうけど。
「……何かごめん」
胸を縮めるような体勢のままアルフレートは俯いた。
「いいえ、そんなこと言わないで。あなたは悪くないの。それより、急に動いては駄目よ。身体に良くないわ」
そう返すと、彼は面を上げる。
「ありがとうルレツィアさん」
そして笑みを浮かべた。
「またきみに助けられてしまったね」
「助けられたのは私よ、庇ってもらったんだもの」
彼の笑みを見ていると心が穏やかになる。
この平穏を、この愛しい笑みを、失いたくない――強くそう願う。
「違うよ。きみがぼくを救ってくれたんだ。あの時も、今回も、同じ」
それからもアルフレートは必要な治療を着実に受けた。当然だ、王子だから。その位ゆえ、誰よりも良い治療を受けられるのである。と言っても、幸いそこまで複雑な状態ではないのでそこまでややこしい治療が求められたわけではなかったのだけれど。
そして、次に問題となったのは、この事件の犯人であるアドムをどうするかであった。
処刑するのか否か――最終的に決めるのは国王だ。
もちろん、被害者であるアルフレートの意見も取り入れられる。
アルフレートはアドムを許さないと言った。けれどもその訳は己が傷つけられたからではなく。私に対して酷いことを言い放ったから、というものであった。彼はそういう意味でアドムに対して怒りを抱いていた。
そうして、アドムは処刑、ということとなった。
話し合いを重ねた末の決定であった。
そして数週間後、アドムは、王子を傷つけた罪と王子の婚約者を侮辱した罪の罰として首を断たれることとなった。
私が実際にそこに立ち合ったわけではないけれど、最期を迎える時、アドムは「死にたくない!」と喚き酷く暴れていたそうだ。
死にたくない、は分かる。それは人間として当然の感情だ。死が迫れば誰でもそう思うだろう、よほどの事情がない限り。だから、死にたくないと思い発すること自体は、おかしなことではないと思う。
でも、そう思える心があるなら、なぜ他者を傷つける行動に出たのか。
自身が傷つくのは嫌なのに他者を傷つけるのは許されるのか?
そんなわけがない。
そもそも、彼が処刑となったのは、彼自身が他者を傷つけるようなことをしたから。そして実際に傷つけたから。せめて思考だけに留めておけば良かったのに、彼はそれを行動に移した。それがすべての始まり。
だから、たとえ死を与えられても、自業自得だ。
また、アドムが処刑された直後からアドムが生前加入していたと言われている団体『魔法使いは穢らわしいので国のために滅ぼすべきと皆に教える会』の活動が急激に過激化したそうで。その会の者たちは、「平和的な主張のため」と言いつつ街を練り歩き、次第にエスカレートして暴れまわったそうだ。棒で店の窓を破壊したり、強盗紛いのことをしたり、と、その行いはとにかく酷かったようで。その結果、多くの会員が拘束され、団体も解散させられることとなったそうだ。
そして、これは後に知ったことだが、拘束された会員の中にはアドムの母親もいたそうだ。しかもそこそこ地位のある会員だったようで。彼女もまた過激な行いを推奨していた一人だったそう。そういう事情もあって、アドムの母親もまた、後に処刑されたそうだ。
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