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前編
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私の婚約者は王子だ。
名はエルベンという。
彼は決して悪人ではないのだけれど……これまで付き合ってきたなかで気づいたのだが、少々頭が緩いところがある。
彼は他人の言うことを信じやすいタイプだ。
特に、幼馴染みである女性エネネが言うことは、それがどんなにぶっ飛んだことであってもすぐに信じてしまう。
「マリア! 君はエネネを虐めていたそうだな! しかもしまいには薬を盛って暗殺しようとしたそうじゃないか!」
ある日、エルベンは急にそんなことを言ってきた。
「……はい?」
「事実なのだろう!?」
「まさか。そのようなことはしていませんが」
「しかし! エネネが言っていたのだぞ!?」
「証拠は何かありました?」
「エネネが言っていた! これが動かぬ証拠だ!」
馬鹿だろうか。
被害者本人の発言主張。
それが動かぬ証拠だと言うなら正直どうかしていると思う。
けれども彼はすっかり信じ込んでしまっていて。私が「そのようなことはしていない」と言ってもまったく聞かず。それどころか「酷いことをしたうえしていないと否定するなど最低だ」などと言い出した。
「君との婚約は破棄する! そして、悪女は牢へ行け!」
そうして私は牢行きとなってしまった。
何もしていないのに……。
虐めとか暗殺とかそんなことするわけがないのに……。
けれども王子の権力には勝てなかった。
私が牢に収容された日。
エネネがわざわざやって来た。
「何をしに来たのでしょうか」
「あっははは! 牢行きになってざまぁ!」
「…………」
「そもそも! 後から出てきて王子の婚約者になるとか狡いんだよ! ばーか! せいぜい罪人になってなよ!」
……取り敢えず録音しておこう。
その後も、私は己の名誉のために戦った。
証拠を集める。
エネネのこれまでの嘘を調べる。
私が虐めていない暗殺なんてしていないことを証明するために動き続けた。
そして、準備が整うと、私はそれらの証拠物を手にして実際に戦うことを決めた。
そうして私は、己の無実を証明することができた。
エルベンは最後の最後まで「エネネが嘘をつくはずがない!」とか「エネネの言うことはすべて真実なんだ! エネネがそう言っていたから間違いない!」とか「エネネを陥れるようなことを言うな!」とか騒いでいたけれど、国王は私の無実を正式に認めてくれ、直接謝罪してくれた。
名はエルベンという。
彼は決して悪人ではないのだけれど……これまで付き合ってきたなかで気づいたのだが、少々頭が緩いところがある。
彼は他人の言うことを信じやすいタイプだ。
特に、幼馴染みである女性エネネが言うことは、それがどんなにぶっ飛んだことであってもすぐに信じてしまう。
「マリア! 君はエネネを虐めていたそうだな! しかもしまいには薬を盛って暗殺しようとしたそうじゃないか!」
ある日、エルベンは急にそんなことを言ってきた。
「……はい?」
「事実なのだろう!?」
「まさか。そのようなことはしていませんが」
「しかし! エネネが言っていたのだぞ!?」
「証拠は何かありました?」
「エネネが言っていた! これが動かぬ証拠だ!」
馬鹿だろうか。
被害者本人の発言主張。
それが動かぬ証拠だと言うなら正直どうかしていると思う。
けれども彼はすっかり信じ込んでしまっていて。私が「そのようなことはしていない」と言ってもまったく聞かず。それどころか「酷いことをしたうえしていないと否定するなど最低だ」などと言い出した。
「君との婚約は破棄する! そして、悪女は牢へ行け!」
そうして私は牢行きとなってしまった。
何もしていないのに……。
虐めとか暗殺とかそんなことするわけがないのに……。
けれども王子の権力には勝てなかった。
私が牢に収容された日。
エネネがわざわざやって来た。
「何をしに来たのでしょうか」
「あっははは! 牢行きになってざまぁ!」
「…………」
「そもそも! 後から出てきて王子の婚約者になるとか狡いんだよ! ばーか! せいぜい罪人になってなよ!」
……取り敢えず録音しておこう。
その後も、私は己の名誉のために戦った。
証拠を集める。
エネネのこれまでの嘘を調べる。
私が虐めていない暗殺なんてしていないことを証明するために動き続けた。
そして、準備が整うと、私はそれらの証拠物を手にして実際に戦うことを決めた。
そうして私は、己の無実を証明することができた。
エルベンは最後の最後まで「エネネが嘘をつくはずがない!」とか「エネネの言うことはすべて真実なんだ! エネネがそう言っていたから間違いない!」とか「エネネを陥れるようなことを言うな!」とか騒いでいたけれど、国王は私の無実を正式に認めてくれ、直接謝罪してくれた。
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