上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む
「マリアは無実である! ここにそう宣言する!」

 国王は皆の前で宣言。

「エルベン、お主は嘘を信じ込んで婚約者を切り捨てたうえ牢へ送った。権力を勝手な使い方をしたこと、許されることではない」
「ぱ、ぱぱ! 違うんだ! エネネが言ったからだよ! エネネは言っていたよ、私の言うことは絶対真実だ、って」
「そのような言葉を簡単に信じるな」
「でもぱぱ! エネネは昔から本当のことしか言わないよ!」
「馬鹿めが。前におかしな物売りに騙されておっただろうが」
「そんなことなかったよ! 信じないよ! エネネは絶対に絶対に絶対に嘘つきじゃないんだ!」

 エネネを信じ込んでいるエルベン。
 彼女が牢行きとなった私に対して言った言葉の音声を流してもなお、彼は私が無実だと理解できなかったようで。

「エネネは嘘つきなんかじゃない、エネネははめられたんだ、エネネだけは僕を理解してくれるんだ、エネネは僕の神様で天使なんだ、それを陥れようなんて許せない、父上までエネネを陥れようとするなんて酷い、エネネは僕の守り神なんだ、何がどうなっているとしてもエネネは嘘つきじゃない、エネネははめられているんだ、エネネは絶対本当のことしか言わないんだ」

 その後、私は解放され、エネネは牢へ入れられることとなった。

 これで良いのだ。
 これが本来の形なのだから。

 しかしエルベンはこの事実を受け入れられなかったようで、エネネが牢送りになったことで心を病んだそうだ。

 彼は自室から出てこなくなり、エネネをはめた者たちだから誰も信じられないと不信感に襲われ、皆が自分を殺そうとしているという被害妄想で夜も眠れなくなったそうだ。

 一方、牢送りとなったエネネはというと、見張りの男たちに玩具にされたそうだ。

 こうして無事自由の身となれた私は、エルベンとやり直すことはせず、後に歴史ある領地持ちの家の子息と結ばれた。

 早いもので、あれからもう数年が経過したけれど、今は温かい夫と共に穏やかに幸せに暮らすことができている。

 子にも恵まれ。
 今は忙しいけれども毎日が楽しい。

 子の成長を見守るというのも楽しみの一つだ。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...