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前編
しおりを挟む「エリシア、いつかきっとスミレの咲いたこの丘で会おう」
「うん!」
それは、幼い頃の記憶。
私にはアーレスという異性の幼馴染みがいた。彼とは友達を越えたような関係だった。それこそ、親友、なんて言葉が似あうような。そしてある意味兄弟のようでもあった。
「約束だよ」
「約束ね!」
彼が引っ越さなくてはならなくなった日、私たちはそう約束した。
またいつか会おう。
スミレの咲くこの丘で。
それが私たちの約束だった。
◆
あれから私はアーレスと再会できないまま年をとった。
そして今年、ついに婚約者ができた。その人の名はモルテスという。婚約が決まった時には「これでアーレスに会えなくなる」とがっかりした。が、モルテスとの関係は思ったより良くないもので。
昨日、ついに、婚約破棄を告げられてしまった。
なんてことだ! と普通は思うところだろう。でも私は違っていて。むしろ解放されたような心地よさがあって。これでまたアーレスに会える! なんて思って、少しでも気を緩めたらにやけてしまいそうなくらいだった。
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