いつかきっとスミレの咲いたこの丘で会おう、そう約束していた幼馴染みがいたのですが……またいつか会えるでしょうか。

四季

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後編

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 モルテスは私より他の女性を愛した。

 でもいいの、私はそれで。だって私にはあの約束があるから。彼との約束がある、だからそれでいい。

 ……とはいえアーレスに再会できるという保証があるわけでもない。

 だから私はまたしばらく平凡に実家で暮らすことにした。

 だが、ある日の散歩中、通りかかった丘で出会ったのだ――間違いない、確かにその人だった。

「アーレス!」
「……エリシア」

 そこには彼がいた。

「見間違い……じゃないわよね?」
「エリシアこそ」
「ええそうよ! 私! エリシアよ!」

 飛び上がるほど嬉しかった。

 だって、だって、また会えたのよ! 誰よりも親しかった人に!

「君はまだ独身で?」
「一度婚約したのだけれど破棄されて、結局一人よ」
「僕もまだ独身」
「そうなのね……!」

 彼は微笑んで「これから一緒に暮らそう」と言ってくれて、それで、私たちは結ばれることとなった。

 そうして私とアーレスは末永く幸せに暮らしたのだった。

 ちなみにモルテスはというと。

 あの後、愛した女性からお茶会中に罵倒されたうえ「二度と視界に入るな」と言われ、瞬間的な怒りに乗せられてその女性を殴ってしまったそうだ。

 で、それによって、二度と公の場に出てはならないという罰を受けたそう。
 そんな流れでモルテスは社会から切り離されてしまい、彼は段々自室に引きこもるようになっていったらしい。

 その後情緒不安定にもなり、両親も彼の世話にはかなり苦労していたようである。


◆終わり◆
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