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14.挑戦?
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ロゼットがトイレ掃除の係になって数日が経過した、ある日のこと。
いつも通りグレーのつなぎを着たスープがミリアムに話しかけてきた。
「ミリアムさん! ちょっといいっすか?」
「えぇ。何か用かしら」
スープは基本いつも一階のガレージにいる。施設内とはいえ別のところに出歩くことはほとんどと言っても過言ではないくらいない。彼がガレージから離れるのは、全員が対象の招集がかかった時くらいのものだろう。そのくらい、彼はいつもガレージにいて、機械いじりをしている。
「その……実は頼みがあるんすけど」
いきなり声をかけられたミリアムは、戸惑ったような顔をしてしまいながらスープに接する。
「あのロゼットって能力者の人に会いたいんすけど……」
「そうなの? どういう風の吹きまわしかしら。能力者は怖いのではなかったの」
「苦手っす。でも……その、この前は失礼なことをしたなって思って……」
スープは真面目な顔をしている。それを目にしたミリアムは「嫌いになりたくて嫌いになったわけじゃないのだな」ということを再確認した。
「分かったわ。じゃあロゼットと会えるようにするわね」
「助かりまっす!」
スープがロゼットと仲良くなってくれたら良いのにな。
そんなことを思うミリアムだった。
◆
夜、ロゼットの掃除の仕事が終わったタイミングを見計らって、ミリアムはロゼットに会いに行った。ちなみに、その場所は東側一階のトイレ前である。
「お疲れ様。ロゼット」
両手を背中側で組み、上半身を少しだけ前に倒して、ロゼットに話しかける。
「あ。ミリアムさん」
ミリアムの姿が視界に入った瞬間、ロゼットはほんの少し頬を緩めた。瞳には輝きが宿る。
「掃除はどう?」
「順調です。僕の能力を活かせるので、楽しく取り組ませてもらっています」
トイレ掃除なんて、皆が喜んでする仕事ではないだろう。世の中を見渡せば、嫌がる人もきっと多いはず。けれども、ロゼットはトイレ掃除係を不快には思っていないようだった。むしろ楽しんでいるくらいだ。
「それは良かったわ」
「ありがとうございます。それで、用は何でしょうか?」
ミリアムは前置きをしてから本題へ持ち込もうとする。が、ロゼットの方はそれとは逆で、速やかに本題へ入っていこうとしている様子だ。
「あぁ、そうだったわね。話すわ。前にガレージのところで会ったスープって人、覚えてる?」
「はい。覚えていますよ」
「あの人がね、ロゼットに会いたいみたいなの」
「能力者が苦手だったのでは?」
「そうなの。でも、改めて会ってみたいみたいで」
ミリアムの発言を聞いたロゼットは奇妙なものを見たかのような顔をする。
すぐには理解できない、とでも言いたげだ。
「前にあった時のことをね、気にしていたみたいなの。失礼だったなって思っていたようなの」
「失礼などではありませんよ。そうお伝え下さい」
ロゼットは微笑んでそう述べるが、ミリアムは頭を左右に振る。
「ちょっと。どうしてそうなるのよ。そういう話をしているのではないのよ?」
「そうなのですか」
「スープと会ってくれるかしら?」
「ミリアムさんが仰るのであれば、もちろん、会うくらいお安い御用ですよ」
「ありがとう! じゃあスープのところまで案内するわね」
掃除が完了した直後で疲れていたであろうロゼットだが、それを表情に出すことはしなかった。
◆
ミリアムがロゼットを連れていったのはガレージ。スープが多くの時間を過ごしている場所だ。ガレージには工具やネジなど色々なものが落ちている。うっかり踏んだら痛そうなので、慎重に歩かねばならない。
「スープ! ロゼット来てくれたわよ!」
「はいーっす」
ミリアムの声に反応し、スープの大きな体が自動車の下側からにょきっと現れた。
「ロゼットさん連れてきてくれたんすね!」
「そうよ」
「ちょっと待っててほしいっす。今からそっちに行くっすよー」
手でぱんぱんを胴体を叩き、つなぎについた埃を払った。それから、厚みのある手袋を外し、手の甲で額の汗を拭う。汗の雫の一部は宙に舞うが、本人はそのことには気づいていない。そのまま、ミリアムとロゼットがいる方へと駆けてくる。スープの足はとても器用で、散らばっている工具やネジを上手く避けていた。
「ミリアムさん! お待たせしましたーっす」
「彼を連れてきたわ」
ミリアムはロゼットを指が開いたままの手で示す。
それに伴って、スープの視線がロゼットへと向いた。
最初、スープは気まずそうな顔をした。以前のことがあるから気を遣っているのだろう。あるいは、ロゼットに怒られやしないかと心配になっているのかもしれない。何にせよ、迷いなく関わっていける自信はスープにはなかったようだ。
「お久しぶりです。スープさん」
ロゼットは微笑みながらそう挨拶した。
いきなり何事もなかったかのように言葉をかけられ、スープは戸惑ったような顔をする。
「ひ……久しぶりっす……」
スープの声が段々震えてくる。否、震えているのは声だけではない。脚、手、胴体も、すべて震えてきてしまっている。悪魔の化身にでも会ったのか、というほどに、スープは震えていた。
「普通に話していただいて問題ありませんよ。僕もただの人間ですので」
「そ、そうすね……」
「能力者はそんなに恐ろしいものですか」
「ひゃんッ!」
ロゼットの瞳が静かな光を宿していたのが怖かったのか、スープは悲鳴のような声をあげて数メートル後退した。
意味が分からずきょとんとするロゼット。
ミリアムは「これは本当に大丈夫なのか?」と不安に思いつつ、二人の様子を見守る。
「脅かしてしまいましたか。すみません」
「あーいやいや……その……大丈夫なんすよ。けど……」
「けど?」
「やっぱ怖いっすぅーっ!!」
ミリアム以外の能力者とまともに関われるようになるのは、まだ難しそうだ。
いつも通りグレーのつなぎを着たスープがミリアムに話しかけてきた。
「ミリアムさん! ちょっといいっすか?」
「えぇ。何か用かしら」
スープは基本いつも一階のガレージにいる。施設内とはいえ別のところに出歩くことはほとんどと言っても過言ではないくらいない。彼がガレージから離れるのは、全員が対象の招集がかかった時くらいのものだろう。そのくらい、彼はいつもガレージにいて、機械いじりをしている。
「その……実は頼みがあるんすけど」
いきなり声をかけられたミリアムは、戸惑ったような顔をしてしまいながらスープに接する。
「あのロゼットって能力者の人に会いたいんすけど……」
「そうなの? どういう風の吹きまわしかしら。能力者は怖いのではなかったの」
「苦手っす。でも……その、この前は失礼なことをしたなって思って……」
スープは真面目な顔をしている。それを目にしたミリアムは「嫌いになりたくて嫌いになったわけじゃないのだな」ということを再確認した。
「分かったわ。じゃあロゼットと会えるようにするわね」
「助かりまっす!」
スープがロゼットと仲良くなってくれたら良いのにな。
そんなことを思うミリアムだった。
◆
夜、ロゼットの掃除の仕事が終わったタイミングを見計らって、ミリアムはロゼットに会いに行った。ちなみに、その場所は東側一階のトイレ前である。
「お疲れ様。ロゼット」
両手を背中側で組み、上半身を少しだけ前に倒して、ロゼットに話しかける。
「あ。ミリアムさん」
ミリアムの姿が視界に入った瞬間、ロゼットはほんの少し頬を緩めた。瞳には輝きが宿る。
「掃除はどう?」
「順調です。僕の能力を活かせるので、楽しく取り組ませてもらっています」
トイレ掃除なんて、皆が喜んでする仕事ではないだろう。世の中を見渡せば、嫌がる人もきっと多いはず。けれども、ロゼットはトイレ掃除係を不快には思っていないようだった。むしろ楽しんでいるくらいだ。
「それは良かったわ」
「ありがとうございます。それで、用は何でしょうか?」
ミリアムは前置きをしてから本題へ持ち込もうとする。が、ロゼットの方はそれとは逆で、速やかに本題へ入っていこうとしている様子だ。
「あぁ、そうだったわね。話すわ。前にガレージのところで会ったスープって人、覚えてる?」
「はい。覚えていますよ」
「あの人がね、ロゼットに会いたいみたいなの」
「能力者が苦手だったのでは?」
「そうなの。でも、改めて会ってみたいみたいで」
ミリアムの発言を聞いたロゼットは奇妙なものを見たかのような顔をする。
すぐには理解できない、とでも言いたげだ。
「前にあった時のことをね、気にしていたみたいなの。失礼だったなって思っていたようなの」
「失礼などではありませんよ。そうお伝え下さい」
ロゼットは微笑んでそう述べるが、ミリアムは頭を左右に振る。
「ちょっと。どうしてそうなるのよ。そういう話をしているのではないのよ?」
「そうなのですか」
「スープと会ってくれるかしら?」
「ミリアムさんが仰るのであれば、もちろん、会うくらいお安い御用ですよ」
「ありがとう! じゃあスープのところまで案内するわね」
掃除が完了した直後で疲れていたであろうロゼットだが、それを表情に出すことはしなかった。
◆
ミリアムがロゼットを連れていったのはガレージ。スープが多くの時間を過ごしている場所だ。ガレージには工具やネジなど色々なものが落ちている。うっかり踏んだら痛そうなので、慎重に歩かねばならない。
「スープ! ロゼット来てくれたわよ!」
「はいーっす」
ミリアムの声に反応し、スープの大きな体が自動車の下側からにょきっと現れた。
「ロゼットさん連れてきてくれたんすね!」
「そうよ」
「ちょっと待っててほしいっす。今からそっちに行くっすよー」
手でぱんぱんを胴体を叩き、つなぎについた埃を払った。それから、厚みのある手袋を外し、手の甲で額の汗を拭う。汗の雫の一部は宙に舞うが、本人はそのことには気づいていない。そのまま、ミリアムとロゼットがいる方へと駆けてくる。スープの足はとても器用で、散らばっている工具やネジを上手く避けていた。
「ミリアムさん! お待たせしましたーっす」
「彼を連れてきたわ」
ミリアムはロゼットを指が開いたままの手で示す。
それに伴って、スープの視線がロゼットへと向いた。
最初、スープは気まずそうな顔をした。以前のことがあるから気を遣っているのだろう。あるいは、ロゼットに怒られやしないかと心配になっているのかもしれない。何にせよ、迷いなく関わっていける自信はスープにはなかったようだ。
「お久しぶりです。スープさん」
ロゼットは微笑みながらそう挨拶した。
いきなり何事もなかったかのように言葉をかけられ、スープは戸惑ったような顔をする。
「ひ……久しぶりっす……」
スープの声が段々震えてくる。否、震えているのは声だけではない。脚、手、胴体も、すべて震えてきてしまっている。悪魔の化身にでも会ったのか、というほどに、スープは震えていた。
「普通に話していただいて問題ありませんよ。僕もただの人間ですので」
「そ、そうすね……」
「能力者はそんなに恐ろしいものですか」
「ひゃんッ!」
ロゼットの瞳が静かな光を宿していたのが怖かったのか、スープは悲鳴のような声をあげて数メートル後退した。
意味が分からずきょとんとするロゼット。
ミリアムは「これは本当に大丈夫なのか?」と不安に思いつつ、二人の様子を見守る。
「脅かしてしまいましたか。すみません」
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