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前編
しおりを挟む信じていた婚約者に浮気という形で裏切られ、しまいには婚約破棄まで告げられてしまった。
それが一週間前の出来事。
それからというもの、私は一日中何となく憂鬱だった。
体調が悪いわけではない。咳が出るわけではないし、頭痛がするわけでもない、それに内臓に違和感があるわけでもないのだ。ただ、常に頭が重いような脳内が暗いような感覚があって。まるでねばねばしたものがへばりついてきているかのよう。どうしてもすっきりしない。
そんな状態のまま実家で暮らしていた私は、親から少々心配されたりもしたけれど、それでも何とか生きていた。
楽しいことなんてあるわけがない。
嬉しいことだって何一つとしてない。
でも、それでも、ただ息をしてただ今日を生きる。
その時の私にはそれしかできなくて。
だからただひたすらに生きた。
それは人生という海を泳ぐようなもの。
どこへ着くかなんて分からないままただひたすらに身を動かし生命を動かし続けるだけ。
――そんなある日の晩、寝ようとしていた私の前に不思議な存在が現れた。
『貴女はこれから幸せになります。ですからどうか不安に思わないで。今は辛いかもしれませんが大丈夫、近く多数の幸福が貴女に降り注ぎますよ』
金髪女性のような姿をしていて半透明で煌めく粉をまとっている不思議な存在は微笑んでそう言った。
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