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後編

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 実家へ帰った私は「やはりまったく知らない……」と再確認することとなった。
 迎えてくれた両親の顔さえ心当たりがなかったからだ。

 ちなみに今の私はリカエラというらしい。

 もうここで生きてゆくしかない。
 私は記憶喪失の令嬢として扱われ生きていくことになった。


 ◆


 リカエラとして生きるようになって数年。
 温かな周囲の人たちに支えられ、私は、つい先日ある男性と結婚した。

 今は夫となった人と二人穏やかに暮らしている。

 きっかけは行きつけの店にお互いが通っていたこと。そこで知り合った私たちはいつも挨拶をしているうちに徐々に親しくなり、いつしか、趣味のことなどまで語り合うようになった。そんなある日結婚うんぬんの話題が出た日があって、その後、流れるように結婚するに至った。

 今回はすべてがスムーズに進んだ。

 そういえば、リカエラの前の婚約者だったあの男性は、結婚してからも不倫を繰り返したそうで……ある日の晩、その話で妻と喧嘩になっていた最中に衝動的に妻を殴ってしまい、死亡させてしまったそうだ。

 今は牢屋に入れられているらしい。

 リカエラとなった私は戸惑いつつも幸せに生きてゆくだろう。

 残念なことになった彼とは大違いの素敵な人生である。


◆終わり◆
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