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前編
しおりを挟む夫グリゼルが不倫していたのは、夏みかんの箱の中だった。
ずっと前から、家の前、玄関出てすぐのところに置かれていた大きな箱。夏みかん、と文字が書かれたもので。しかし妻である私はいつからそれが置かれているのかを知らず。謎に謎を塗り重ねて作ったような箱だった。
前に一度それについて聞いてみたところ、グリゼルは実に不愉快だとでも言いたげな顔をした――だから何かあるのだろうとは思っていた。
けれど。
以前中を確認しようと触ってみていたら突如現れたグリゼルに怒鳴られしまって。
それ以来私は色々怖すぎてその箱に近寄れなくなった。
「ねえ、あの箱、何か入ってる?」
近所の人からそう言われた時は驚いた。
でも心当たりは一切なくて。
だから余計に戸惑いが大きくて。
――何でも、あの箱は私が知らないところで動いているらしい。
けれどもそんな話はよく分からなかった。
動いているところを私は見たことがなかったからだ。
「あの箱、やっぱりおかしいよ! 捨てたら?」
ある時そう言ってくれたのは友人。
「でも……夫に捨てるなって言われてて……」
「捨てるなって? ただの箱を?」
「そうなのよ」
「じゃあ今度動いていたら中身見とこうか?」
「え、いいの?」
「いいよ! 武装して覗いてみる!」
「あ、ありがとう……気をつけてね……?」
「うん! 任せな!」
そして、友人の協力によって、グリゼルと一人の女性がその箱の中で不倫していたことが判明した。
夫が女性と共に箱の中から出てきた時にはかなり驚いた。
「これは一体……どういうこと?」
「ち、違うんだ、これはっ」
「グリゼル、一体何をしていたの? 箱の中に男女で詰まるなんて」
「探し物をしていたらはまってしまったんだ! 本当にそれだけ、それ以上のことなんてないんだ!」
グリゼルは不倫を否定していたけれど、その後二人の関係性が明らかになるようなものが箱の中から発見され、二人の行いが明るみに出ることとなった。
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