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婚約破棄され、心に降り注ぐ雨――。

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「あんたとはもうやっていけねぇよ。てことで、婚約は破棄な」

 その時が来ることを恐れていた。
 けれどもその瞬間は訪れてしまった。

 私は捨てられたのだ。

 言えるものなら言いたかった。

 嫌だ、と。
 どうして、と。

 けれどもこの国においては男性の権力が強いため、女である私には言い返す権利などない。彼が何か言ったなら私は大人しく受け入れ従うしかない、というのが、この国における常なのだ。

 私は一礼して彼の前から去る。

 婚約破棄され、心に降り注ぐ雨――。

 いつだって笑っていよう。
 その方が幸せになれそうだから。

 そう思って生きてきた私でさえ、今はどうしても笑えない。

 絶望に絶望が重なり。
 言葉さえ失い。
 涙流すことさえも難しいほどに胸の奥に降る大雨。


◆終わり◆
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