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前編

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 私の婚約者バレットは一国の王子。

「お前との婚約は破棄とする」

 そんな彼がこう言ってきた理由――それを私は知っている、浮気である。

 彼には私より愛している女性がいた。
 それはもう少し前から。
 私が婚約した頃にはその女性はまだいなかったのだけれど、婚約後すぐに現れたのである。

「そして、ここで死んでもらうぞ」

 王子が言えば、周囲から兵が数名出てくる。

 彼らは武器を手にしている。
 どうやら本当に私を仕留めるきのよう。

 ……これは、やるしかないか。

 やりたくなかったけれど仕方ない、そう思って、魔法を発動する。

「なっ……魔法……!?」

 バレットの顔が急激に青白くなる。

 そう、私が魔法を使えることは誰も知らない。

 ずっと隠していたのだ。
 それについてあれこれ言われるかもしれないのが嫌で。
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