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前編
しおりを挟むその日、私はたまたまちょっとした用事で婚約者ルーゲンの自宅へ行ったのだが、そこで目撃してしまった――彼が知らない紺のドレスの女性といちゃついてるところを。
二人は甘く唇を重ねていて。
しっとりとした時間が流れている。
婚約者がいるなんて欠片ほども感じさせないほどのロマンス、二人だけの世界が誕生している。
私はこの世界では誰でも使える撮影魔法を使って二人が唇をくっつけ深め合っているところを撮影。さらに、より深い仲になっていっているところも撮影した。それから、すすす、と静かにその場から去った。なぜなら、私の存在がばれたらまずそうだったから。彼の正式な婚約者として堂々と出ていく選択もあったかもしれないが、私はそれは選ばなかった。
このデータさえあれば終わらせられるだろう。
帰宅後、私は、ルーゲンの行いを両親に明かした。
もちろん撮影したものも見せて。
「何よ、これ……あり得ない、どうしてこんなことができるの。ルーゲンくんって……最低ね」
「許せん! 絶対! こんなやつとの婚約なんぞ認められん! わしが言って婚約破棄してやる!」
母は引き、父は婚約を破棄するべく動き出した。
その後。
「ルーゲン! お前、よくもうちの娘がいる身でこのようなことをしたな!」
「え? 何のことですか?」
「とぼけるな!」
父はばぁんと力強く撮影したものを刷った写真を出す。
「これは何だ! 説明しろ!」
場の空気が凍りつく。
「あ……そ、それは……罰ゲームで……」
「そんなことでここまでするのか!?」
「ご、誤解、で……」
「何が誤解なんだ、これだってあるぞ」
父はさらに深い関わりとなっている写真を出す。
「う……」
ルーゲンは非常に気まずそうな面持ちでいる。
まともに説明もできていない。
何でもないなら、本当に事故的なことなのなら、きっちり経緯を説明できるだろうに。
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