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前編
しおりを挟む「君の歌はきっと多くの人たちに幸福を届けるよ」
レッツフォンドとの出会いはある演奏会。
その時はまさか彼と婚約するなんて思っていなくて。
けれども歌を褒めてもらえたことは嬉しかった。
「素晴らしい歌い手だね」
「ありがとうございます」
小さい頃から好きだった歌を褒めてもらえたことは何よりも嬉しくて――気づけば彼のことも好きになっていた。
だから。
「僕と婚約してくれないかな?」
レッツフォンドからそう言われた時、とても嬉しかった。
まるで夢の世界に迷い込んだかのようで。
不安な感じもあったけれど。
それでも輝いている彼を信じて前へ進むことを選んだ。
歌を褒めてくれた彼とならきっと幸せになれる――そう信じていた。
その時は、まだ。
◆
「また女性と会っていたわね。それも、二人きりで」
「はぁ? 何だよ、うるせえなぁ」
婚約してから数ヶ月が経った頃、レッツフォンドはやたらと浮気のような行為を繰り返すようになった。
しかも、そのことについて話すと、急に感じの悪い態度になる。
「いちいち鬱陶しいんだよ、てめぇ、何様のつもりだ? あ?」
「どうしてそんな言い方をするの」
出会った頃、彼はいつだって優しかった。それに、親しみを感じさせつつも丁寧に接してくれていて。だからきちんとした良い人と思っていた。
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