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4話

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「待ってくれ! 話を聞いてほしい!」
「……まだ何か言うことがあるの」
「フレーチェとの関係は一時の気の迷い! 気の迷いだったんだ!」

 慌て過ぎてか、ダイスはおかしなことを言い出した。

「気の迷い?」
「そう、そうなんだ! フレーチェはただの友達で、それ以上の存在ではないんだ!」
「へぇ……」
「そういうことをしてしまうなんてどうかしていた! ごめん、リーネリア!」

 フレーチェがいるところでそんなことを言って大丈夫? 随分慌てているけれど、しっかり聞かれてしまっているわよ? それは問題ないのかしら。後で困らない?

 少しハラハラしてしまう部分もある。

 けれどもこれは彼の選択。彼が言っていることは彼自身が選んで言っていること。だから私が気にすることはない。私がわざわざ彼のことを心配する必要もないのだ。

「本当に想っているのはリーネリアだけだよ!」
「……本当に?」
「も、もちろん! もちろん。その通りっ!」
「そう。……ありがとう」
「リーネリアなら分かってくれると思っていたよ! では今回の話はこれで……」

 安堵したような表情を滲ませるダイス。
 私は敢えて柔らかく微笑む。

「では、婚約破棄とするわね」

 きょとんとした顔をするダイス。

「フレーチェさんとお腹のお子さんと、お幸せに」

 私はすべてを投げ捨てた。
 けれども後悔はない。

 彼と過ごした時間は不幸ばかりではなかった。けれども、こうなってしまってはどうしようもない。婚約者以外の女性に子どもができたとなると、きっとこれからややこしいことになるに違いない。

 だから私は自ら身を引く。
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