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前編
しおりを挟む昨日、婚約破棄された。
幼馴染みから婚約し特別な関係となった彼アダムスから、関係の解消を一方的に告げられて。
それはまるで突然の災害のようなもの。
彼の宣言が私の胸から平穏を奪い取っていってしまったのだった。
――だが。
翌朝、手紙の確認をするため郵便受けへ向かったところ、家の前には大量のにんじんが立っていた。
しかも、四肢のあるにんじんだ。
「ぼくたちはにんじんです、あなたのふくしゅうをかわりにけっこうするべくあつまりました」
「あなたこんやくはきされましたよね」
「きのう、きのう」
「かわいそうなおじょうさまをほうっておけないのでぼくたちがちからをあわせてふくしゅうしてまいります」
しばらく呆然としてしまった。
理解できる域を遥かに超えていたのだ。
「むかし、あなたのせんぞに、ぼくたちはたすけられました」
「のろわれのにんじんといわれころされかけたところをすくってもらったのでする」
「だからぼくたちは」
「いまから、いまから」
「ふくしゅうをだいこうしてきますので、きょかだけください」
何が何だかよく分からないままで頷いたところ、にんじんの群れは走り去っていった。
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