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前編
しおりを挟む私には子を為す能力がないらしい。
そう判明した時、私は、すべてを失うことを覚悟した。
ポルテという婚約者がいたのだけれど、彼にそのことを告げるのが何よりも怖かった。だって、告げた時が終わる時だから。本当のことを言ってしまえば間違いなく関係は終わる、でもだからといってそんな重要なことを黙っているわけにはいかない。そのいくつもの波の中で揺れていた。
――けれども、そのことを伝えてみると。
「そっか。分かったよ。でも僕は、君との関係を終わらせる気はないから」
ポルテはあっさりとそんなことを言ってきた。
「え……?」
そのあっさり感に驚いた。
もっとショックを受けたような顔をされると予想していたから。
「べつに、僕との婚約を破棄したい、って話じゃないんでしょ?」
こんな重大なことを告げたというのに、ポルテは爽やかで柔らかな表情のままだ。
気を遣って無理をしている?
いや、でも、そうは見えない。
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