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4話
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「オリバー王子、ネネさんと身体の関係を持っていたというのは事実ですか?」
婚約破棄のための書類は既に用意している。
あとは彼にサインしてもらうだけ。
「だったら何だ! 関係ないだろう!」
いきなり逆ギレとは、一国の王子が何事か。
せめて冷静に対応できないものか。
「いえ、関係あります。私は貴方の婚約者ですから」
「だったら何だって言うんだ! 婚約者と言っても形式だけの婚約者だろう。ネネとは違う! ネネとは想い合っているんだ!」
オリバーは火でも吹きそうな勢いで怒鳴り散らす。
人のいない場所だったのが唯一の救いか。
「いずれにせよ、こんなことになったまま結婚することはできません」
結婚前から不貞行為。幸せな未来があるとは考え難い。たとえ私が妻となったとしても、彼は彼女のところへ行くだろう。彼は妻に遠慮するような人ではない。
「こちらこそ! 君のような高飛車女と共に生きる気はない!」
「そうですか。分かりました、では婚約破棄しましょう。ネネさんと幸せになってください」
「あぁ! その方が百倍良い!」
「分かりました。ではここにサインお願いします」
ついにこの時が来た。
私は書類を差し出す。
婚約破棄に関する紙を見せられた彼は一瞬怯んだような顔をした。この展開は予想していなかったのかもしれない。だが彼がどう思っていようが関係ない。私はやるべきことをやるのみ。
「なっ……、これは……?」
「あとは貴方のサインだけです」
「ま、待て! 話が分からん!」
「何ですか? 私と別れてネネさんと幸せになる方が良いのでしょう?」
「ぐっ……」
オリバーは狼狽えながらもサインしてくれた。
◆
私と彼の婚約破棄が発表されると、両国で騒ぎが起こった。
婚約破棄の理由も同時に発表されたので、それも大きかったかもしれない。
それからの日々は落ち着けないものだった。私は彼と別れられてすっきりしたものの、世の中ががさがさと揺れるようで、心が安らぐことはなかった。
とはいえ、私の名誉に傷がつくことはなかった。
彼の行動が婚約破棄の理由であるとはっきり発表されていたからである。
一方、オリバーはというと、国民からかなり叩かれていたようだ。
日頃は気にならないような小さな悪口も、数が増えるとその力は大きくなってゆく。皆の感情のうねり、その力とは、意外と凄まじいものだ。
これにはさすがのオリバーも段々心を折られてしまったようだった。
両国を行き来している者から聞いた話によると、オリバーは強い批判と嫌がらせを受けていたようだ。また、中には過激な者もいて、移動している最中に襲いかかられたこともあるそうだ。
さすがにそれはやり過ぎな気もするけれど……。
被害を重ねるうちにオリバーは心を病み、やがて、自室から出ることを恐れてしまうようになったそうだ。今ではもう、自室から一歩出ることさえできないらしい。外出の予定は入れられなくなり、食事も自室にて一人で行う。それが今の彼の暮らしだそうだ。
また、ネネはというと、王子をたぶらかしたということで国から犯罪者ということにされてしまったらしい。現在は、王子を罠にはめた悪女として、牢に入れられているとか。
◆終わり◆
婚約破棄のための書類は既に用意している。
あとは彼にサインしてもらうだけ。
「だったら何だ! 関係ないだろう!」
いきなり逆ギレとは、一国の王子が何事か。
せめて冷静に対応できないものか。
「いえ、関係あります。私は貴方の婚約者ですから」
「だったら何だって言うんだ! 婚約者と言っても形式だけの婚約者だろう。ネネとは違う! ネネとは想い合っているんだ!」
オリバーは火でも吹きそうな勢いで怒鳴り散らす。
人のいない場所だったのが唯一の救いか。
「いずれにせよ、こんなことになったまま結婚することはできません」
結婚前から不貞行為。幸せな未来があるとは考え難い。たとえ私が妻となったとしても、彼は彼女のところへ行くだろう。彼は妻に遠慮するような人ではない。
「こちらこそ! 君のような高飛車女と共に生きる気はない!」
「そうですか。分かりました、では婚約破棄しましょう。ネネさんと幸せになってください」
「あぁ! その方が百倍良い!」
「分かりました。ではここにサインお願いします」
ついにこの時が来た。
私は書類を差し出す。
婚約破棄に関する紙を見せられた彼は一瞬怯んだような顔をした。この展開は予想していなかったのかもしれない。だが彼がどう思っていようが関係ない。私はやるべきことをやるのみ。
「なっ……、これは……?」
「あとは貴方のサインだけです」
「ま、待て! 話が分からん!」
「何ですか? 私と別れてネネさんと幸せになる方が良いのでしょう?」
「ぐっ……」
オリバーは狼狽えながらもサインしてくれた。
◆
私と彼の婚約破棄が発表されると、両国で騒ぎが起こった。
婚約破棄の理由も同時に発表されたので、それも大きかったかもしれない。
それからの日々は落ち着けないものだった。私は彼と別れられてすっきりしたものの、世の中ががさがさと揺れるようで、心が安らぐことはなかった。
とはいえ、私の名誉に傷がつくことはなかった。
彼の行動が婚約破棄の理由であるとはっきり発表されていたからである。
一方、オリバーはというと、国民からかなり叩かれていたようだ。
日頃は気にならないような小さな悪口も、数が増えるとその力は大きくなってゆく。皆の感情のうねり、その力とは、意外と凄まじいものだ。
これにはさすがのオリバーも段々心を折られてしまったようだった。
両国を行き来している者から聞いた話によると、オリバーは強い批判と嫌がらせを受けていたようだ。また、中には過激な者もいて、移動している最中に襲いかかられたこともあるそうだ。
さすがにそれはやり過ぎな気もするけれど……。
被害を重ねるうちにオリバーは心を病み、やがて、自室から出ることを恐れてしまうようになったそうだ。今ではもう、自室から一歩出ることさえできないらしい。外出の予定は入れられなくなり、食事も自室にて一人で行う。それが今の彼の暮らしだそうだ。
また、ネネはというと、王子をたぶらかしたということで国から犯罪者ということにされてしまったらしい。現在は、王子を罠にはめた悪女として、牢に入れられているとか。
◆終わり◆
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